弁理士葉隠れ道~欧州・ドイツ篇~

日本と欧州との懸け橋となるべく、慣れない欧州で七転び八起きしながらも欧州のローファーム(特許法律事務所)で何とか励む日本弁理士の日記です。欧州の現状の紹介や、海外での勤務を夢見る方々の参考になれば幸いです。 <免責事項>本ブログは、管理人である私一個人の見解を記載したものであり、内容について管理人の勤務先が責任を負うものではありません。また本ブログの内容は無保証です。ご利用は自己責任でお願いします。ご理解のほどお願いします。 ご意見等はこちらまでお気軽にどうぞ。minmin70707アットマークyahoo

欧州移行用の出願書類

 

欧州に移行する特許出願書類は、移行時に特許請求の範囲や明細書の体裁を整えることが可能です。特に、パリ優先権に基づく特許出願の場合、明細書や特許請求範囲の中に不明確な記載等があったとしても、移行後の補正が厳しくなってくるため、移行段階で以下の観点から出願書類をチェックすることが重要です。

 

【形式面】

1-1;2パートフォーム

所謂、おいて書き以下の請求項1の特徴部分は、翻訳文で“wherein”以下で記載されていることが多いので、おいて書き以下を“characterized in that”によって示します。

 

注意する点は、従来技術に記載されている事項は、“characterized in that”以前に、

従来技術に記載されていない特徴部分を“characterized in that”以降に記載することです。

 

また、“characterized in that”以降には、文(subject + verb+ object)が後続します。

Claim 1:

An engine comprising feature A, feature B and feature C having a cube c1.

と記載されており、feature Cが従来技術に開示されていない特徴部分である場合、“characterized in that”以下には、feature C having a cube c1を引用しますが、

 

An engine comprising feature A, feature B,characterized in that feature C having a cube c1.

とせずに

An engine comprising feature A, feature B,characterized in that feature C has a cube c1.

と、characterized in that以下を句ではなく節とすることが重要です。

 

1-2;符号

請求項の各技術的特徴には、実施形態中の符号を記載します。

各実施形態によって、同一の技術的特徴の符号が相違する場合は、それぞれの符号を記載します。

この符号が正確に記載されていなかったことによって、後々の実体審査でトラブルになった事例もあるので、形式事項とはいえど要注意です。

 

1-3;不明確な記載

特許請求の範囲や明細書中に、不明確な記載がある場合は、この際に補正することも検討しなければなりません。特に、特許請求項で曖昧な特徴部分が、明細書内でも同じ表現がされており、実施形態でも別の明確な表現がされていない場合には要注意です。

この場合には、明細書中に明確な表現、定義が存在する場合には明細書の文言を用いて請求項の該当部分を移行の段階で補正します。

一方、明細書中に明確な表現、定義が存在しない場合には、後々どうしようもない事態になりかねないので、明細書及び請求項の該当部分を当業者が導ける範囲内で補正します。

 

不明確と指摘されやすい特許請求項の記載として、発明が物の発明である場合に方法の発明に用いられるべき表現が混在している場合です。 A is formed by increasing distance between space B and Cや、A is formed by processing a plate B 等が該当します。

 

他には、英語での表現の場合、請求項に記載されている部材が単数なのか、複数なのかを明確にする必要があります。断面図は複数で観えるバネであっても、実際には単体の物体で、断面で確認できる個々のバネを表現しているのか、全体として一つのバネを表現しているのかによって単数・複数の表現も相違してくるので要注意です。

特に、日本語では文法上、単数・複数を規定する必要性がないので、単数なのか複数なのかを日本語での明細書作成段階から意識して記載する必要があります。これは、世界に通じる明細書としての一要件です。

 

 

【実体面】

請求項数が15以内であれば追加料金は発生しないので、

請求項数に余裕があれば、請求項に記載されていない特徴部分の追加や、実施形態に対応する従属請求項の追加も検討します。