ドイツ特許出願を補正することができる時期 (補正の時期的要件)
日本の基礎出願をもとにドイツに国内段階移行する場合、
ドイツ特許請求の範囲の補正を行うことが可能な時期は、
a) 移行と同時
+
b) 移行後~審査請求前
+
c) 移行後~最初の拒絶理由通知を受けるまで
+
d) その他:最初もしくは2回目以降の拒絶理由通知を受けてから、特許を付与すべき旨の決定が行われるときまで(特許査定の準備が完了するまで、または口頭審理を申請した場合は、口頭審理が終了するまで)
となります (ドイツ特許法38条)。
つまり、
「移行手続~特許付与の決定まで」の間、
何度でも補正を行うことが可能です。
a) 移行と同時に補正を行う場合、以下の事項に注意する必要があります。
(1)補正書の提出
・PCTルートの場合、原文のミラー翻訳の提出が必要なため、補正した特許請求の範囲等は出願書面ではなく補正書として別途提出しなければなりません。
特許明細書のミラー翻訳【出願書面】と補正書との両方を移行時に提出する必要があります。
・一方、パリルートの場合、原文のミラー翻訳の提出が不要であるため、
請求項記載事項の「2つ又は3つのソケットを備える装置」を「3つのソケットを備える装置」に補正する場合でも、その他、新規の説明を明細書に追加したり、新たな請求項を起案する場合でも、この補正や新規の説明、新たな請求項を含む特許明細書を、【出願書面】として提出することができます。
つまり、補正書の提出は必要ありません。
(原文の範囲を超える追加事項については優先権の利益を得られず、移行日が当該新規事項の判断時期になります)
(2)審査請求
移行と同時に補正を行う場合、通常、審査請求を同時に行います。
一方、移行と同時に補正を行ったものの、例えば日本の基礎出願の様子を見て移行後に審査請求を行う場合、
審査請求をする際に、移行時に提出した補正書の基づき審査をして欲しい旨を特許庁に意思表示する必要があります。
なお、拒絶理由通知は通常2回ほど発行され、3度目以降の拒絶理由通知が発行される場合は、
口頭審理で審査官と補正案を詰めるのが通常です。
ドイツ特許庁の口頭審理はEPOと比べると簡易なものなので、
難題な案件や重要な案件は、口頭審理で審査官とベストな権利化の道を模索することも手です。