二年目で観えてくること
気付けばドイツでの仕事と生活も二年目に突入しました。
二年目となると、一年目と違い、精神的・時間的な余裕が出てくるせいか、ドイツに対する色眼鏡が外れてくるせいか、色々なものが見えてきます。
例えば、
・ドイツ語も英語も全く上達しない
・カプチーノが美味しい
・日本人が思っているほど親日的でもないし、勤勉でもない、自身の実績は主張しなければ良いとこどりされる
・仕事よりプライベート優先
・不満点に対してはストライキ等を通じて徹底的に交戦する
・有給取得率略100%、一方、祝日が少ないので実質的には日本の方が休みは多い
・ドイツ人は、ビールにソーセージばかり食べているわけではない
・革製品が安価だが臭う
・現地人ではなく我々日本人や外国人に、現地人が道を聞く
等々、他にも色々と挙げられます。
一方、ドイツに骨を埋める覚悟でドイツに飛び込んできた、と言い放って我武者羅に励んできた仕事面でも最近、冷静に見えてくるようになりました。
『欧州で日本弁理士として働く上での方向性』で記載したように、私の仕事はドイツでバリバリとオフィスアクションに対応したり、明細書を作成したりというようなものではなく、
複雑な案件のサポートに回ったり、日頃のコミュニケーションをサポートしたり、
クライアントとの新しいワークフローの構築に関与したり、
マーケティング調査、翻訳、通訳、時には重要案件の間に入って調整したり、営業に回ったり等、
所謂、コーディネータとして働いています。
これに対し、最近
『余り実務業務を与えず、事務所として“弁理士”である君を育てる気が全くないのではないか』という鋭いご指摘をお世話になっている方々から受けますが、
確かに一理あるご指摘です。
一方、英語及びドイツ語の言語面では現地代理人に劣る反面、
日本人としての言語、日本文化、礼儀等は他の現地代理人にはないものなので、
日本クライアント対応に回ったり、新規マーケット開拓に専念させるということは、
事務所経営としては、“個々の強みを引っ張り出して、利益を最大化する”という点では人使いが巧い気がします。
とはいえ、欧州及びドイツの実務とその経験者が周辺に転がっている環境にありながらも、
この一年間で全く実務に精通できていない事実は、重く受け止める必要がありそうです。
そして、そうした基盤のないものが日本で先生方に偉そうに講演をしたところで、
直ぐに化けの皮は剥がれてしまいます。
これが、二年目で仕事において気付いたことの一側面です。
ちなみに、現在、欧州で先陣を切って実績を積み、現在は至るところからヘッドハンティングのくるある日本人は、
最初は事務所としても日本人弁理士の扱い方が分からず本人も途方にくれていたようですが、
過去のオフィスアクションを読み込んで勉強したり、それに対する対応案を書いてみては上司を探して添削して貰ったりと、あらゆる機会を見つけ、創り出し、
現在の立場を築いたようです。
ドイツで道なき道を切り開いていくためには、それくらいの努力が必要なのかもしれません。
他方、実務に関わる機会は少ない分、日本や欧州でご活躍中の方々とお会いする機会は圧倒的に増えましたし、日本でも人が集まるところには顔を出させて貰えるので、
日本の事務所ではなかなか得られなかった機会に恵まれています。
こうしたお仕事で日本やドイツで多くの方との縁が一年間で爆発的に増加したことは、
今の事務所に居るからこそなので、これは利点として評価しなければなりません。
また、ドイツから日本弁理士が来るのと、日本の一事務所から来るのとでは、
お逢い出来る方も先方の興味も大分違っているので、
この一年間でお逢いした方々とのご縁は、事務所の財産でもあるのでしょうが、
それ以上に私にとって掛け替えのない財産です。
これが、二年目で仕事において気付いたことの他側面です。
自身が非難したいときには難点のみ、
自身が肯定したいときには利点のみ
を抽出してしまうのが人の性なので、
こうした利点(一側面)・難点(他側面)も踏まえた上で、ドイツ、そして現在お世話になっている事務所に、今後どのように腰を据えていくのかを考えていかなければならない、
そう思った昼下がりの日曜日でした。