欧州特許出願及びドイツ特許出願の審査結果、査定までの期間を大公開
【欧州特許出願及びドイツ特許出願の審査結果】
2011年以降、ドイツ特許出願、欧州特許出願のいずれもが
見事な右肩下がりのグラフとなり、審査期間が短縮されつつあります。
出願が特許庁に継続しているだけで『維持年金』が発生するという素晴らしい収益システムを確立している欧州特許庁とドイツ特許庁ですが、
『自分たちが審査を遅延させた分だけ、維持年金で儲かるとは何事か!?』
と世界中から叩かれた甲斐あって、オフィスアクション発行、及び査定までの期間短縮に力を入れているようです。
なお、ドイツ特許出願は、ドイツを第一国出願の場合が含まれているため(つまり、日本国特許庁ではなくドイツ特許庁に基礎となる最初の特許出願を行った場合)、
日本を第一国とした場合は上記期間の2~3倍と考えた方がよさそうです。
【ドイツ特許出願の審査促進手法】
(1)ドイツ特許庁を第一国出願とする
日本語でも出願できます。ただし、出願から3か月以内にドイツ語の翻訳文を要提出。
(2)出願から4か月以内に審査請求
移行と同時が理想です。
ドイツ特許庁が第一国出願であってかつ移行と同時に審査請求されたドイツ出願に対しては、8か月以内にファーストアクションを発行しなければならないとの努力義務が審査官に課されています。実際は、10か月ほど。
最速を目指すのであればこの手法がおすすめです。
(3)可能な限り早く拒絶理由に応答する
審査官も人間。発行したばかりの拒絶理由はまだ頭の中に入っています。
拒絶理由を受領したら翌日には応答するくらいの気持ちで挑みましょう。
(4)電話する
私も日本の友人とメールだけでやりとりをしていると、日本語ですら誤解が起きることが多々あります。審査官も同じです。ましてや、技術と法律のからむ特許書面ならなおさらです。
特許までの流れは、審査官との交渉です。交渉とは、相手方と自分とがお互いに納得のいく最終地点を見つけ“共同作業”です。
代理人が審査官に電話して技術や応答案の主張を分かりやすく説明し、お互いに合意のいく最終地点に一日でも早く到達しましょう。
なお、電話のタイミングは、オフィスアクションを受け取った直後がベストです。
ちなみに、審査官の評価は、欧州特許庁もドイツ特許庁も、ポイント制です。
ポイント=査定数
です。
つまり、特許査定か拒絶査定をすればするほど審査官も昇進し、待遇もアップします。
代理人として、審査官の昇進を手伝うくらいのつもりで、特許しやすい発明の範囲、分かりやすい明細書と応答書の作成を心がけましょう。
(5)PPH、他審査促進手段
早期審査制度を活用します。
なお、外国出願戦略の一つとして、PPHを活用することも勧められています。
しかし、PPHはあまりお勧めできません。
それは、PPHを主張するには、特許査定(もしくは肯定的見解)となった日本出願等のクレームの翻訳文が必要となり、移行段階からいきなり限定された権利範囲となるからです。
留意すべきは、PPHの趣旨はあくまで審査を促進することであって、
査定率を上げることではないことです。
そして、ドイツや欧州特許庁はじめ、多くの特許庁は、日本特許庁が特許査定になったからといって、その査定結果を全くもってあてにせず、独自の判断基準で審査を行います。
つまり、移行段階でせっかく権利範囲を限定しても、さらに違う方向への限定が必要になってしまったり、
審査促進の効果もあくまでも初回のオフィスアクションが発行されるまでの限られた期間となります。
【PPH⇒審査促進】
であって、
【PPH⇒査定率向上】
ではありません。注意しましょう。
(6)ドイツ特許出願の注意事項
イギリスのEU脱退も決まり、欧州出願の魅力も低下し、
これまで進めてこられた念願の単一効特許制度の実施も雲行きが危うくなってきました。
欧州出願の魅力が低下する一方、増加するのがドイツ特許出願です。
ドイツ出願を行う際にはいくつかの注意事項が存在します。
- 出願言語:
・パリルート経由:日本語で出願可能(3か月以内にドイツ語の翻訳文)。
英語、フランス語⇒12か月以内にドイツ語の翻訳文
・PCTルート:ドイツ語のみ
- 維持年金
日本と同じく維持年金が発生します