弁理士葉隠れ道~欧州・ドイツ篇~

日本と欧州との懸け橋となるべく、慣れない欧州で七転び八起きしながらも欧州のローファーム(特許法律事務所)で何とか励む日本弁理士の日記です。欧州の現状の紹介や、海外での勤務を夢見る方々の参考になれば幸いです。 <免責事項>本ブログは、管理人である私一個人の見解を記載したものであり、内容について管理人の勤務先が責任を負うものではありません。また本ブログの内容は無保証です。ご利用は自己責任でお願いします。ご理解のほどお願いします。 ご意見等はこちらまでお気軽にどうぞ。minmin70707アットマークyahoo

PCT出願の国際調査機関の見解書ISAに対する非公式コメント“informal comments”  其の弐

 

 PCT出願の国際調査機関の見解書ISAに対する非公式コメントについては、WIPOより詳細に説明されております。以下、下記WIPOニュースレターに基づく情報です。

http://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/newslett/2015/newslett_2015.pdf

 

Q:

・国際調査機関の見解書を受け、国際事務局へ非公式コメントを提出したいのですが、非公式コメントに関連するPCT 規則の情報が見あたりません。

・非公式コメントの提出期限及び、PCT 第19 条に基づく説明書のように、非公式コメントに文字数の制限があるのか教えて下さいますか?

・また非公式コメントは国際出願と共に公開されますか?

・今後もし国際予備審査請求書を提出する場合、非公式コメントは国際予備審査機関へ送付されますか?

 

A: 2002 年9 月に開催された第31 回PCT同盟総会にて、国際調査機関(ISA)による新しい形式の見解書の作成に関するPCT規則が採択されました。

 

同盟総会は、出願人がISA見解書に応答するための特別な規定を規則に含まない旨を同意しました。ISA見解書に対する公式な応答は、国際予備審査手続きの一部としてPCT第34 条に基づき、国際予備審査機関(IPEA)へ提出される必要があります。

 

しかしながら、国際予備審査請求書が提出されない場合には、出願人は国際事務局(IB)へ非公式ベースでコメントを提出することにより、ISA見解書に対し反論の機会を得ます。

 

そのような非公式コメントはその後、指定官庁へ送付され、さらにPATENTSCOPEにて閲覧可能となります。非公式コメントである故に、PCT規則には関連する情報がありませんが、PCT出願人の手引 国際段階の概要のパラグラフ7.030(http://www.wipo.int/pct/guide/en/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf)にいくつか情報があり、また関連するPCT同盟総会文書には有用な背景情報が掲載されています。

 

非公式コメントを提出する特別な期限はありませんが、当該コメントを提出できる最も早い時期はISA 見解書の作成後であり、優先日から28 ヶ月の期間内に提出すれば、当該コメントは国内段階移行時に指定官庁で利用可能となります。

 

優先日から30 ヶ月を過ぎて受理された非公式コメントは、単に国際事務局IB の一件書類に保存されるだけで、PATENTSCOPE には掲載されず(期限満了後にIB へ提出された他の文書と同様)、指定官庁へも送達されません。

 

国内段階手続きにおいて、何れかの指定官庁がISA 見解書に対するコメントを考慮するよう希望するのであれば、当該コメントは直接各官庁へ提出する必要があります。

 

非公式コメントの言語に関しては、何れの言語の非公式コメントもIB は指定官庁へ通知し(複数言語の場合もあり)、何れの指定官庁も、該当する場合には、当該コメントの翻訳を要求することができます。

 

 

PCT第19 条に基づく請求の範囲の補正に関する説明書の500 語を上限とする要件(PCT規則46.4)とは異なり、非公式コメントには文字数の制限がありません。

 

また、PCT第19 条に基づく補正とは異なり、非公式コメントは国際出願と共に公開されませんが、国際公開日後にPATENTSCOPE(“書類”タブから)にて閲覧可能となります。非公式コメントは、ISAに送付されず、国際予備審査請求書が提出された場合はIPEAにも送付されません。

 

非公式コメントはePCT システム(https://pct.wipo.int/ePCT)の“ドキュメントアップロード”機能を利用して国際事務局IB へアップロードすることができます。

 

本機能の利用には、基本的なWIPO ユーザアカウントを作成しePCT パブリックサービスを利用することででき、電子証明書でユーザアカウントの認証をする必要はありません。或は、非公式コメントを次のFAX番号へ送付することも可能です:

+41 22 338 82 70

もし国際予備審査請求書を提出し、非公式コメントとしてIB へ送付したコメントをIPEAに考慮してもらいたいのであれば、国際予備審査手続(第II 章)の一部として、PCT 第34条に基づきIPEA へ直接再提出する必要があります。

 

この場合、混乱を避けるため、

“非公式コメント”という表示は削除し、コメントには第II 章の目的のための答弁書である旨を表題に含むことを確認してください。

 

第II 章の見解書に対する答弁書の提出のための正式な手続きに関する情報としては、IPEA に対して複数の補正や抗弁をすることができますし、またIPEA に口頭で連絡することも可能です。詳細はPCT 規則66.2 から66.6 及び66.8 をご参照ください。国際予備審査請求書が提出されれば、非公式コメントは指定官庁へは転送されませんが、PATENTSCOPE では閲覧可能です。

 

該当する場合、PCT 第19 条に基づく説明書と補正書を共に提出することで、及び/または、国際予備審査請求をしPCT 第34 条に基づく補正書を提出することで、ISA 見解書で指摘された事項に応対すれば、より強力な特許を得られるかもしれません。19 条補正の提出は非公式コメントの提出への追加という形でできますが、異なる形式の提出であることを明確に区別するよう注意してください。

 

上記に述べたように、国際予備審査の目的のための非公式コメントの内容の提出を希望であれば、第II 章の目的のためであると明確にしIPEA へコメントを再提出する必要があります。

 

欧州特許庁(EPO)によりすでに調査された先の出願に基づく優先権を主張して受理官庁としてのEPO へ提出された国際出願で、EPO がISA として選択された場合においては、国際出願と共に先の出願に関してEPO へ非公式コメントを提出することが可能です。

 

必要な要件を満たせば、国際調査を担当する審査官は非公式コメントを考慮するでしょう。“PCT Direct”として知られるこの手続きは、上記で議論されるPCT の通常の非公式コメントと混同されませんようご注意ください。(PCT Direct の詳細は、PCT Newsletter 2014 年11 月号の4 ページを参照。)

 

 

以上、かなりマニアックな情報ですが、参考になれば幸いです。