特許明細書執筆の偉大なる使命
日本の弁理士は、世界で最も多くの明細書を世界最高品質で執筆するといわれています。
特に、実施形態の提案能力、発明を広げるという付加価値の点では、
右に出る外国の代理人はいないでしょう。
一方、欧米の代理人は、或る素材(明細書)に基づき、論理を展開する点では長けているように感じます。
欧州に来て約二年が経ちますが、
「弁理士業務の基盤は明細書作成技術である」
「日本の技術進出の要、最後の砦である」
ことを日々実感します。
そしてこのことを、納期やノルマに追われている日本の弁理士の先生方、特許技術者の方々に伝え、日本知財を支える先生方を克己することを、今後の日本での活動の一軸にしたいと思っています。
(私はそうした明細書の作成量(月何件)や売上、広いクレーム等、既存とは異なるベクトルの弁理士像を見出したく欧州に来ましたが、まさにベクトルを変えたからこそ、余計に元のベクトル(基軸)の重要性も客観的に見えてきたと思います)
日本の出願件数、技術力の高さも相まって、
欧州、ドイツの異議申し立てや審査中、大変に多くの日本の公開文献が引用されることがあります。
特に、最近の欧州特許庁の審査官は、原出願が日本以外のものでも、
日本の文献を積極的に引用する傾向にあります。
また、こうして審査段階で拒絶された欧米、他国の特許出願、異議申立や無効になった特許には、枚挙にいとまがありません。
実際、ここにもう一言触れていさえすれば、欧州全体で出回っている欧米企業の製品がすべて日本企業のものに一新されたり、膨大なライセンス料を獲得できたような事例も多くあります。
つまり、日本に出願するだけでも、その公開情報に基づき、
日本だけはなく世界中で、同技術を模倣したものや類似するものが権利化されることが阻止されます。また、過誤で権利化されてしまった権利が日本での公開情報をもとに無効になったりもします。
また、日本企業のライセンス提携や事業進出に際して、主役はやはり、
日本の明細書をもとに翻訳され、欧州で権利化された特許です。
明細書内の記載や請求項の権利範囲をもとに、数々の論争や交渉が繰り広げられるわけです。
残念ながら、そうした活躍の場を日本で明細書を執筆している先生方が目にすること、肌で実感することは大変難しいのが実情です。
まして、納期やノルマ、圧倒的な業務量に追われる日々では、その重要性を実感することすら難しいように感じます。
そんなとき、皆さんの執筆している明細書が、一字一句悩みながら執筆しているその明細書が、
「弁理士業務の基盤は明細書作成技術である」
「日本の技術進出の要、最後の砦である」
ことを常に念頭において、誇りと重責を念頭に励んでほしいと思います。
対価と報酬も仕事のモチベーションの一つではありますが、
その仕事の意義や重要性を知ることもまた大きなモチベーション源になります。