渉外弁理士 ~窓口のよいこととわるいこと~
渉外弁護士だけではなく、渉外弁理士という言葉があるそうです。
渉外の定義は、
(1)外部と連絡・交渉をすること。
(2)ある法律事項が国内だけでなく外国に関係連絡をもつこと。
となっています。
今まで、顧客対応の窓口と、みどりの窓口如く、自身の業務を謳っていましたが、
或る友人兼クライアントが『ドイツでの渉外業務がんばってください』と言ってくれたのを切っ掛けに、“渉外弁理士”というちょっと響きの良い言葉があることを知りました。
先日、日頃お世話になっているクライアントから、
『貴殿の対応は、いつも、どの現地代理人よりも早く、大変助かります』旨感謝され、
一人ルールで、入所以来、当日来た依頼等は即日回答を目標にしていたのですが、
それが報われた気がしました。
またお菓子等をメインに扱われているクライアントから、重要案件に関する同僚の日本人弁理士とドイツ人弁理士との素晴らしい対応への御礼にと、チョコレート等が届き、甘党の私はそのお零れに預からせて頂きました。
勿論、所内では、私には重要事項に関する決定権もなく、経営陣との調整や、例えば名義変更等の手続き一つ取っても専属の担当者の智慧を借りる必要があります。
このため、同僚や上長との連携、換言すれば、彼等をうまく動かしつつ個々の能力を発揮してもらいつつ気持ちよく働いてもらうことは、窓口、渉外業務を務める上で要となります。
この業務を務めて約一年半、どちらかというと、
自身以外の再三のミス等が原因でクライアントに叱られては謝ってばかりしており、
(※やはり、所内では下っ端でも、各クライアントにとっては窓口である私が代表者になる場合もあるので誠心誠意詫びることは重要です)
一方、所内では君は代表ではないからあまり出しゃばるな、という考えの持ち主もごく一部居たりするので、
この、対外的には事務所を代表しての窓口、所内的には権限のない一スタッフとして、
事務所のミスに対する責任を執ることにストレスを感じることが多かったのも事実です。
一方、最近は上記のように、それぞれの専属担当者の協力もあって事が上手く運び、
それに対してクライアントから感謝されることが増えたので、
これも窓口としての良い面であります。
17年前に読んだ、唐沢寿明の名著『ふたり』の最終章に、
【一人から二人になったことで、嬉しいこと、楽しいことは二倍、悲しいことは半分になった。この手だけは絶対に離さない】
という一説があります。
この一説を参照させて頂くと、
【約100人のスタッフが属する組織の窓口、渉外業務を務めることで、
クレーム対応が200回あっても、感謝をされることが50回もある】
とも言えます。そしてクレーム対応こそが、トラブルが発生したときにクライアントを繋ぎ止める最後の砦になったりもします(この点はもっと評価されてもいいかもしれません)
変わらず特許実務に直接携わる業務は少ないですし、
クライアントから喜ばれており高いニーズが存在する以上、日本弁理士をドイツ弁理士で代替可能な実務面ではなく窓口・コーディネータとして使うことで他所と差別化するという事務所の方針は変わらないと思いますが、
日々の業務に楽しみを見出してがんばる日々であります。