職務発明と営業成果と自身の将来の行く末
職務発明は、発明者個人としての努力、才能によるところも大きいが、
雇用側による施設や時間、予算等の機会提供も大きいため、
雇用側に属すように、職務発明に関する規定が改訂される。
そして、実際には、出願に際して職務発明に関する権利は雇用側に譲渡されている。
弊所で現在、営業活動も主に担っている。
営業を通じて、今まで接点のなかった企業や事務所に飛び込み、弊所を売り込むわけである。
この最初の壁はもっとも高く、歓迎されない場合や色々と情報提供を要求される場合もある。
この最初の壁を越える段階は、残念ながら『出張機会』という事務所側からの提供以外は、独力で乗り越える必要がある。一企業に関しては、上司が興味があったようで資料作成に際して情報提供してくれましたが、、
去年は、この最初の壁に一人日本でたくさんぶつかり、多くの大きな壁を乗り換え、
新しい企業や事務所との関係を築き上げた年。
このほか、自身が窓口を務めるようになったクライアントからの案件が二倍になったりと、
現ドイツ事務所には長期的な多大な利益をもたらすことが出来たと信じている。
一方、こうした自身の実績が弊所内でも目立ってくる中、
予想通り、経営層は私の実績を評価するだけではなく私の存在を一つのリスクとして考え始める。つまり、クライアントと私との関係が強くなり、私が弊所代表者としてクライアントから見られたり、転職に伴ってクライアントも移ってしまうのではないかという“懸念”である。経営側からすれば、もっともな“心配事”である。
この策として、最近変わった弊所ワークフローが、
いままでクライアントとは基本的に日本語でやりとりし、メールの署名も自分のものになっていたが、
個々の案件の責任者や料金表等で私への回答用にしたパートナーの署名入りの英文を先にメールに記載し、その後、私の翻訳文と署名を末尾につけるというものである。しかも送信及び受信のメールには上司をCcで入れる必要があり、まさに監視状態である。
クライアントからすれば、今まで通り、全て日本語でやり取りするのが良いに決まっているところ、
“私含め弊所各担当者の業務効率向上”という意味の解らない『建前』を理由として
こうしたワークフローが休暇中に形成された。
非常に残念である。
つまり、この一年間での実績を評価しつつも、
このままでは私が事務所の代表と誤解されたり、クライアントに対する影響力がこれ以上増大することを懸念しているのである。
ここで、社内研究活動の成果としての職務発明は雇用側に既存し、
営業の成果として出来上がった新しいクライアントとの関係はドイツの企業に(某氏曰く君は責任者ではない、我々が責任者である、ということで)持っていかれる
点で、共通事項が存在する。
上記残念な流れに対する解決策の一つとして、
欧州弁理士になることや、クライアントとの強い信頼関係を築くことが挙げられるが、
欧州弁理士に立っては残念ながら未だ受験資格のめどが立っていないので、
少なくとも、ドイツで働いていることでドイツや日本でお逢いできた方々との繋がりは大事にしていきたいと思う。
また、ドイツにいるからこそ学べること、例えばドイツ企業の強みや知財戦略、ワークライフバランス、ドイツや欧州の法制度や実務、ドイツ語や英語の習得等にも力を入れていく次第である。
特に、ドイツや欧州の法制度や実務に関しては残念ながら業務上での機会が極端に少ないため、機会を見つけて同僚や上司から盗み取るくらいの意識で学ぶとともに、ドイツでもっと実務に携わることのできそうな事務所に応募することも考えなければならない。残念ながらドイツ在住の日本弁理士で営業とサポートが主業務になっているのは弊所だけのように思われるため、その後に続く自身の将来性についても真剣に考えなけれなならない(少なくとも、弊所経営層は、営業等では良いように使いつつも、その点では私を全く育てる気がないようである)。