実務業務の効率化 ~成長軌跡を残すことの重要性~
今年からは、慣れない実務経験と未熟な英語力及び知識をもって、出願書類のチェックや中間処理と格闘する毎日です。
この二年間、経営戦略、マーケットリサーチ、渉外、新規開拓に専念してきただけに、弁理士としての実務的なスキルはまだまだ赤ちゃんレベルです。
日本特許実務でも外国特許実務でも活用できそうな実務効率化を思いついたのでメモしておきます。現地代理人の業務はタイムチャージ制なので、業務効率の高い現地代理人を選定するというのも一つの大事な基準かと思います。
(1)応答案のパターン化とデータベース化
・審査官の指摘事項には、新規性欠如、進歩性欠如、不明確等、色々なパターンがあり、それらの中でも幾つかのパターンが存在します。
・データベース作成に際しては、応答時に鍵となった審査基準や審決も案件毎にメモします。
・映画も拒絶理由も人生も、登場人物は違うものの、スターウォーズもうずまきなるともストーリーのパターンは同じだったりするので、何においても共通パターンを見抜く洞察力は必要です。
(2)反論時に根拠となる審査基準や審決のメモ帳を作成する
・例えば、実施形態から抽出した一部の構成要件に基づきクレームを補正する際には、中間的一般化に関しては、審決t090241eu1で、全ての実施形態に共通して用いられる構成要素に基づくクレームの補正が肯定されているので、その旨を下記のようにメモします。
【審決t090241eu1+共通要素に基づく補正はOK+案件番号】
・この際、日本実務と相反する審査基準や審決等があれば、それもメモしておくと素晴らしい材料になります。日本を発って早二年半、日本の特許実務を忘れつつあるので、覚えているうちにメモしようと思います。。。
これで、根拠審決、結果、さらにはそれらに基づく対応を行った案件を直ぐに引っ張り出すことができる最強メモが完成します。
パターンでカテゴリ化され関連情報が紐づけされたDBと、
根拠毎にカテゴリ化され関連案件が紐づけされたDBとがあれば、
二つの観点から情報を抽出できるので、まずはこの2パターンがあれば十分だと思います。
(3)案件毎の記録
各案件に費やした時間や特徴を日限管理や処理予定日とともにメモします。
これは、日本の事務所で管理していたグループ員と自身の進捗把握のために使用していました。
ただ、あまりやりすぎるとデータベースを作成することが主業務になってしまい、目的と手段が逆になってしまうので要注意です。
(4)集中する、最適な体調で業務に臨む
私は最低週40時間の労働時間を雇用主に提供する雇用契約になっていますが、体調如何によって時間当たりのアウトプットのミス発生頻度も大きく相違します。
通勤電車の出発時間が一時間ごとで往復3~4時間なので、現在はあまり残業ができないこともあり、業務中は最大限集中するようにしています。『集中しよう!』と思ってもそう簡単に集中できるものでもないので、お尻を強制的に決めて、『既定の時間内にこの案件、作業を終わらせる』、という環境を作った方が集中力は高まります。思い返せば弁理士の受験生時代、30万円払った基礎講座に毎日通うため、業務効率の向上に集中した結果、単位時間当たりの売り上げが所内平均の2.5倍になりました(残業が減ったのでだいぶ給料は減りましたが、、、)。
業務に慣れないころは、慣れないがために膨大な時間のかかる業務と並行してDBやテンプレートを作成するのは大変ですが、むしろ、業務に慣れないからこそ気付く事務所の長短や日本特許実務との相違事項があります。
ですので、初期段階に時間を投資して、日々学んだ事項をこまめに記録することで、その後の業務効率も成長速度も大きく変わってくることと思います。
また、こうした成長の軌跡を残しておくことで、次の世代を教育する際には、上記データベースを集合知として、職人稼業の弁理士業のマニュアル化を行うことができ、品質管理や経営効率の向上に繋がると思います。
新しい事務所はまだ入所三か月半でいろんなことが追い付いていませんが、後進のためにも成長の軌跡をコツコツと作成して形として残したいと思います。