弁理士葉隠れ道~欧州・ドイツ篇~

日本と欧州との懸け橋となるべく、慣れない欧州で七転び八起きしながらも欧州のローファーム(特許法律事務所)で何とか励む日本弁理士の日記です。欧州の現状の紹介や、海外での勤務を夢見る方々の参考になれば幸いです。 <免責事項>本ブログは、管理人である私一個人の見解を記載したものであり、内容について管理人の勤務先が責任を負うものではありません。また本ブログの内容は無保証です。ご利用は自己責任でお願いします。ご理解のほどお願いします。 ご意見等はこちらまでお気軽にどうぞ。minmin70707アットマークyahoo

『お箸』を保持するための『箸置き』の発明は『お箸』を構成要件としてクレームに含めるべきか ~日本実務との相違~

 

斬新なデザインの箸置きを発明した個人発明家があなたのところにやってきました。

さて、あなたはどのようにこの箸置きを表現して特許にしますか?

 

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こんなクレームを思いつきましたでしょうか?↓↓ 

 

【請求項1】

お箸を保持可能な形状に形成された一対の支持部を備え、

前記支持部の頂点は、当該箸置きに載置されるお箸の先端側に向かって先細りする形状を有し、

ことを特徴とする箸置き。

 

論点は、

・支持部の形状は、お箸を保持可能な形状であり、

・支持部の頂点の先細り方向は、お箸の先端側が分からないと規定できない、

ということです。

 

このような場合、例外はあるものの、

欧州審査基準;【4.14 Definition by reference to use or another entity】 

http://www.epo.org/law-practice/legal-texts/html/guidelines/e/f_iv_4_14.htm

によれば、原則、『お箸』は、箸置きの特徴である支持部の形状や先細り方向を規定するために必要な構成要件としてクレームの構成要件に追加しなければなりません。

少なくとも、上記のようなクレームでは、普段お箸を使わない欧州人の審査官から、

『箸置きの特徴を特定する上でお箸は必須の構成だから、クレームに構成要件として規定しなさい、さもなければこのクレームは不明確です』と言われかねません。

 

箸置きを権利化したいところが、その特徴を表現するためにお箸を乱用すると、

移行国によっては、お箸と箸置きとのセットの権利となってしまい、箸置き単体の流通が直接侵害に該当しない場合、間接侵害での議論となってしまうことも起こりかねません。

 

お箸に頼らずに箸置きの特徴を表現する。

 

これもまた弁理士としての腕の見せ所だと思いますし、

グローバルに通じる箸置き発明の権利化、ひいては、箸置きとお箸の世界中への普及に繋がるはずです!