欧州勤務の光と影
ドイツで勤務する同志日本弁護士の投稿です。
http://www.iplaw-net.com/doc/2016/chizaiprism_201602_1.pdf
「知財ぷりずむ」への寄稿が掲載になりました。知財領域はもとより、むしろ海外生活者の光と影にも触れており、非常に参考になります。
以下、一部抜粋。
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『現地で働き始めれば、大なり小なり、欧州人の本音にぶつかることになる。』
『海外に駐在する少なからぬ数の日本企業法務知財部員は、日本国内での知財権利行使、とりわけ訴訟は自らが被告になる場合は除き、基本的に今後はやめること、むしろ海外での権利行使に注力することが社内で決定されている旨を私に教えてくれた。この決定が持つ意味について二つのことに留意しなければならない。
まず、このような決定は、むしろ当然といえば当然である。知財権を以て企業の開発投資及びその努力を防衛しなければならないのは、何といっても海外市場だからである。日本は海外市場で稼がなければどうにもならない。しかし、もはや日本製品は、安さでは市場で勝負できない。知財権利行使は、ますます重要になってくる。しかし、私が強調したいのは、知財権というのは、当該市場を知らずには活きてこないということである。
海外市場では、日本国内の競合企業のみならず、海外現地、或いは多国籍企業との競争に打ち勝たねばならないが、そこでは必ずしも最先端技術だけが死命を決するわけではない。市場において受け入れられる価値を持っているかどうか、という別な角度からの価値を勝ち得なければならない。そこでは、生活財であれば、当該市場に住む人々がいかなる生活習慣を持っているか、いかなる価値基準において行動しているか、それを知る必要があるだろう。それを知ってこそ、適切な知財権を選択できる。それにはやはり土地に根差した生活をしてみるのがやはり一番確実である。』