弁理士葉隠れ道~欧州・ドイツ篇~

日本と欧州との懸け橋となるべく、慣れない欧州で七転び八起きしながらも欧州のローファーム(特許法律事務所)で何とか励む日本弁理士の日記です。欧州の現状の紹介や、海外での勤務を夢見る方々の参考になれば幸いです。 <免責事項>本ブログは、管理人である私一個人の見解を記載したものであり、内容について管理人の勤務先が責任を負うものではありません。また本ブログの内容は無保証です。ご利用は自己責任でお願いします。ご理解のほどお願いします。 ご意見等はこちらまでお気軽にどうぞ。minmin70707アットマークyahoo

ドイツで働く上での挑戦

ドイツに来て早一年、どちらかというと良い面ばかり書いてきましたが、

こちらで直面する課題も含めてドイツで働く上での問題点も記したいと思います。

 

海外で働くと文化や言語の違いによる課題も多い、多くの人が口にする事実です。

 

特に、日本ほど『聴く力』に優れた国民は本当に少なく、

顧客の要望に応じたサービス、顧客が漏らした一言から色々と相手のニーズを汲み取って相手に喜んで貰えるサービスを提供する、という『思いやり』は、

日本人の持つ最も偉大な力の一つだと思います。

 

一方、『話す力』、議論、論理の点では欧米に学ぶことが多く、

換言すると、相手の『聴く力』が乏しい故に、話す側の力が必要になる、と解釈することもできます。

 

コミュニケーションは、聴く側と話す側とのトータルが“1”になっていれば成り発つわけで、

幼少から鍛えられていることによって欧米では話す側の能力が高いのだと思います。

残念ながら、相手の発言に耳を心から傾ける力の面では、一般的には、やはりドイツ人は日本人に大きく劣っているように感じます。

そして、ドイツでは相手のニーズに注力するというよりも、

スペシャリストとして、『自身が良いと思うものを提供していく』ことに注力しているように思います。 この結果、ポルシェ等、相手の予測、或る意味でニーズを超越したものを創り出すことができるのだと思います。

 

 

話が戻って、私が直面する問題は、

この『聴く力』の相違によるものです。

 

特に、日本のクライアントの『ニーズ』が垣間見えたとき、

このニーズに応えようとあれこれ昼夜、週末問わず搬送したときに、

私が用意したもの(調査、プレゼン等)、瀕死の想いで搬送した日本出張の結果が、一部の鶴の一声によって最後の最後で、直前で“白紙”にされてしまうことです。

このニーズに関して逐次情報を発信していても、中々伝わらず、最後には「そんなの聞いていない」となって一気に違う方向に事が進んでしまうわけです。こうした『聴く力』の欠如で自身の仕事、相手にとって、そして将来的には会社にとっても利益になるであろう仕事が最後の最後に台無しになることは、大変なストレスです。

 

そう多くはありませんが、仕事でペアになる管理職によっては

相手の明らかなニーズにも応えられない方も残念ながらいらっしゃいます。

 

懸け橋になりたいといってドイツに来ましたが、

そもそも懸け橋が必要ということは、お互いの間に距離や溝があるということです。

やはり、この溝を埋めていくことが私のドイツでの重大な役割の一つだと認識しています。

 

もう一つの日本とドイツとの違いとして、情報系統の違いが挙げられます。

 

日本の場合、上司→その上司→トップ

と段階を踏んで相談していくことが原則です。

 

結果、

a.上が×→上の上が×、は勿論、

b.上が×→上の上は〇、

c.上が〇→上の上は〇、

いずれの場合でも、最終的にはNGとなります。

 

一方、ドイツでは、

 

自分→トップ→トップによる自分の上長を含むマネジメント

という直行型のやりとりも可能なので

トップさえ抜群であれば上記a-cのいずれも問題なく解決できるわけです。

 

つまり、トップ以外の一部の上位職の方に問題があった場合、

直にトップに相談できるので、

トップさえ賢く、柔軟性等があり、相手に聞く耳をもっていれば、

私が得た、察したニーズに応える可能性を見出すことができます。

 

今後はこの教訓を踏まえ、

『日本のニーズに関する事項は、ペアになる管理職のメンバーに拘わらず、始めにトップと上手く交渉して承認を貰っておく』

 

ことにする次第です。 事務所を上手く動かして、日本のニーズに応え、

日本の知財戦略、欧州進出を一層に促進できればと思います。

 

言語以前の考え方の違いを理解しなければ、どれだけ言語レベルが高まっても

円滑なコミュニケーションやマネジメントは難しいということを実感した一日でした。