弁理士葉隠れ道~欧州・ドイツ篇~

日本と欧州との懸け橋となるべく、慣れない欧州で七転び八起きしながらも欧州のローファーム(特許法律事務所)で何とか励む日本弁理士の日記です。欧州の現状の紹介や、海外での勤務を夢見る方々の参考になれば幸いです。 <免責事項>本ブログは、管理人である私一個人の見解を記載したものであり、内容について管理人の勤務先が責任を負うものではありません。また本ブログの内容は無保証です。ご利用は自己責任でお願いします。ご理解のほどお願いします。 ご意見等はこちらまでお気軽にどうぞ。minmin70707アットマークyahoo

『欧州特許庁EPOの効果的な使い道』

 

欧州特許庁は、欧州連合に次ぐ欧州第二位の規模を誇る組織で、優れた調査機関です。

高額ではありますが、様々なサービスを提供し、その審査実務、審査結果、法制度は他国・後進国にも大きな影響を及ぼします。欧州特許庁の使い方如何によっては、信頼性の高い特許を世界で戦略的に取得することが可能となるので、以下欧州特許庁EPOの使い道について解説します。なお、欧州特許庁のメリットの殆どは、PCT出願を最初から英語で行う場合でかつ欧州特許庁を国際調査機関として指定する場合に得られるものなので要注意です。

(出典:EPOのサービス(欧州特許庁提供資料))

 

 

国際調査機関(ISA)としてのEPO

・EPOはISA首位 国際調査報告(ISRs)発行数 80,742

 

f:id:hagakure777:20160524191938p:plain

ISA/EPO選択の利点

RO/JP 英語出願のISAとしてEPOを指定

 

・EPOがISAならEP段階の補充欧州調査免除

・ISA/EP 多くの指定官庁が認めた高品質報告を作成

 

・国際調査料金 2012年設定 2014年据置 €1,875(¥251,600

・EPO高品質調査 アジア特許情報を含む(EPOデータベースには3500万件のアジア特許文献)

・NEW: 2015年11月5日以降 ISRに追補 「search strategy(調査方式)」

 

 

出願シナリオ 英語のPCT出願(第I章

 

f:id:hagakure777:20160524192005p:plain

【補充国際調査機関としてのEPO

・2010年以来、EPOはROおよびISAを問わずすべてのPCT出願人に補充国際調査(SIS)を提供

・目的 異なる言語/技術分野における先行技術の発見

・SIS請求 IBに提出

・SIS料金 = ISA料金 = €1,875 (CHF 1,958)(¥251,600)

・2014年、EPOSISA(補充国際調査機関)首位 全請求の56%

・EPO国際調査と同じ品質、料金、利点 例えばEP段階の補充欧州調査の免除

・広報: OJ EPO 2010, 316 EPO SIS

 

 

【国際予備審査機関(IPEA)としてのEPO

・EPO IPEA首位 国際予備審査報告(IPER)作成数 7,661 (55.7%)

・EPOは、EPOまたはいずれか他の欧州ISAがISAであった場合のみ、国際予備審査機関IPEAとなり得る

 

・第2回目の見解書(WO

−「否定的な」IPERを発行する前にEPOは第2回目のWOを発行する

−電話によるコンサルテーションが行われる場合、必ずしも第2回目のWOを発行しなくてよい

−目的 出願人と審査官との対話推進

−第三者意見を考慮する

・2014年7月1日以来、チャプターIIの開始で「トップアップ」サーチ

−出願人 追加コストなし

−目的 ISR発行後に利用可能な中間先行技術の発見

−広報: OJ EPO 2014, A57

 

 

PCT-PPH (特許審査ハイウェイ)

・出願の優先審査

・EPOの報告書は他のPPH 特許庁でも利用可能 (IP5 + カナダ、メキシコ、シンガポール、イスラエル)

 

f:id:hagakure777:20160524192028p:plain

 

【調査報告早期発行】

・調査報告早期発行イニシアチブはEPOにおいて出願されたすべての出願(選んだルート、例えばPCTまたはEPに関わらず)について、EPOにおける受領から6ヶ月以内に見解書付き調査報告を発行することを目的とする

 

・調査報告を早期に受け取り、審査開始時に急がなくてよいので出願人にとってプラス

・先行技術の概要および特許性を非常に早期に受け取るので一般公衆にとってプラス

・特定された人物によって裏付けのある意見が提出されれば出願人および第三者は手続を速めることができる

参考 http://www.epo.org/news-issues/news/2014/20140703.html

 

 

【グローバルドシエ】

発明に関するすべての出願について出願人および一般公衆が特許情報にアクセスでき、特許を統合的に審査できるようになる

 

・具体的には:参加官庁においてユーザがすべての出願および特許に関するすべての利用可能な情報に効率よくアクセスできる

・アクセシビリティ:出願人/特許権利者、代理人、審査官および他の官庁職員、第三者、一般公衆 機密情報へのアクセスは制限される-アクセスは権限保有者に限定

・どこで:IP5すべて-EPOで 例えばEuropean Patent Register, Espacenet

 

【統合欧州特許情報データベース】

・統合データベースは無料アクセスを提供

−単一アクセスポイントによるEP特許の付与後法的状況基本情報

 

EPO加盟国のオンライン国別特許情報データベースに直接アクセスできる

−統合欧州特許情報データベースは欧州特許情報データベース内から利用可能指定締約国からのデータを集め一画面にまとめる

−このサービスは特許文献詳細画面で左側パネルの「統合データベース(Federated Register)」リンクをクリックすればアクセスできる。

 

 

統一特許パッケージ

 

f:id:hagakure777:20160524192058p:plain

 

・統一特許は13加盟国(ドイツ、フランスおよび英国を含む)が統一特許裁判所協定を批准した時点で効力が発生する( 現時点で8 批准国)

・統一特許関係各国: 26加盟国 (クロアチアとスペインを除く全EU加盟国)

統一特許裁判所: 従来の欧州特許と統一特許の26加盟国における侵害や取消しをカバーする専門特許裁判所

 

 

【統一特許 コンセプト】

・統一特許 統一的効果を有するEP特許、最大26加盟国を網羅

・欧州特許と「統一特許」のための単一EPC手続

 出願および審査手続に変更なし

・欧州特許は特許権者の請求があれば統一効果の利点を享受

 

欧州における発明の保護: PCTから統一的効果を有する欧州特許へ

f:id:hagakure777:20160524192118p:plain

 

【統一特許の具体的利点】

・26の加盟国について単一工程(One Single Step)で保護

・26の国内移行に代る簡略化した登録手続

・集中かつコスト効果のよい更新料金支払い

・特許付与後の翻訳不要(最初の移行期間後)

・EPOが維持管理する特許統一保護のための一元管理登録

・法的確実性をもたらす統一した訴訟制度