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弁理士葉隠れ道~欧州・ドイツ篇~

日本と欧州との懸け橋となるべく、慣れない欧州で七転び八起きしながらも欧州のローファーム(特許法律事務所)で何とか励む日本弁理士の日記です。欧州の現状の紹介や、海外での勤務を夢見る方々の参考になれば幸いです。 <免責事項>本ブログは、管理人である私一個人の見解を記載したものであり、内容について管理人の勤務先が責任を負うものではありません。また本ブログの内容は無保証です。ご利用は自己責任でお願いします。ご理解のほどお願いします。 ご意見等はこちらまでお気軽にどうぞ。minmin70707アットマークyahoo

単一効制度と統一特許裁判所について

来年にははじまる、はじまらないという議論を10年以上続けてきた、欧州圏内で一つの特許効を認める単一効制度ですが、ついに2017年には施行されそうな予感です。

 

また最近盛り上がってきてはいますが、

正直、欧州特許庁に対する特許出願は、オプトアウト(適用除外)が利かなくなる2024年以降、激減すると思っています

 

ロンドン協定が施行されたときも、欧州全体の特許事務所の代理件数が減少した時期がありました。そして、出願減少はそのまま独立採算性の欧州特許庁の予算減少に跳ね返るので、結局は、オプトアウトの適用期間も延長もしくは無期限に延長され、現行制度と並行することになると思います。

 

単一効特許施行に伴い、特に2024年以降に出願件数が減少すると思われる理由の一つは、単一効特許のメリットとしてコスト削減を欧州特許庁や受任を増やしたい英・仏代理人が謳っていますが、単一効特許の費用は上位4カ国指定分に相当する費用+翻訳文:平均2000EURです。実際、欧州移行後、指定される国数の平均は約3カ国である一方、4カ国以上指定する出願人は殆ど製薬会社等であり全指定する傾向にあります。

 

この全指定する出願人が単一効特許のメインユーザになり、制度を売る側としてもコストメリット(全指定した場合と比較して約25%の費用)を謳いやすいのですが、欧州で全指定するということは欧州全体が重要な市場であり、主要製品に係る特許だということです。現行制度では、係争事案や無効審判・無効訴訟は各国レベルの管轄だったので、ドイツは特許権者より、イギリスは条文解釈等、或る程度、判決の予測可能性が高い状況でした。このため、現行制度制度の下では、フランスでは権利行使したところ特許が無効となって取り消されてしまったものの、主要製造国のドイツでは特許が生き残り損害賠償も認められたのでドイツでは事業を継続できる等、リスクが分散される傾向にあります。

 

一方、単一効特許の裁判管轄は、統一特許裁判所UPCにあり、ここで侵害訴訟や無効審判(無効訴訟)が管轄されます。統一特許裁判所の裁判官は、欧州各国から裁判官がパートとして兼業することになる予定ですが、いろんな国の裁判官が集まって判決を出すので、その結果は予測不可能です。特に、世界一のプロパテント国家と謳われるドイツ、特にデュッセルドルフ裁判所の裁判官よりは知財訴訟の経験は浅く、特許権者寄りではない判決が下されることとなります。欧州一の製造国、経済大国、政治国がドイツであることを踏まえると、少なくとも、ドイツ+欧州その他1~3カ国が主要市場である企業にとっては、むしろ、単一効特許ではなく、パリルートもしくはPCTルートでドイツ特許出願で権利を取得した方が、安全と言えます。

 

施行が近づくにつれて日本での欧州代理人のセミナーや営業が盛んになると思いますが、

大体は、単一効特許で訴訟等の代理のチャンスを狙っている英国や仏国といったドイツ以外の欧州代理人によって行われると思います。現地代理人の情報もまだマチマチで、代理人に間で意見が分かれていたり、情報が相違することもあるので要注意です。日本語で情報を収集したいのであれば、JETROデュッセルドルフ支部から発信されている情報が、欧州特許庁が提供した情報に基づく最新かつ高精度な内容なので、こちらから情報を得ることをお勧めします。

 

2017年の単一効特許の施行後、どう市場が変わるか楽しみではありますが、

ますます戦略的な出願や情報収集が必要となりそうです。