図面のみに基づくクレーム補正の是非~日本実務との相違~
経験上、日本の特許実務では、図面のみに開示された特徴に基づく補正であっても認められる傾向にあります。この点、欧州特許庁はそうは問屋が卸さないとばかりに厳格です。
特に、日本では認められているだけに、『図面には開示されているからいいや』と、重要な特徴や発明の主要な効果に関連する特徴を省いたり、作用のみを説明することは、後々に、
・補正ができない⇒他の構成要素に基づいて発明の主な特徴以外の要素で限定
・限定補正したものの、補正が認められなかった場合、補正で追加した特徴を削除すると『逃れられない罠』に陥り、権利化を断念せざるを得ない、
といった痛い思いをすることになりかねません。
(1)図面にのみ記載された事項に基づく補正は不可とする根拠
・T1120/05;『 According to the well established jurisprudence of the Boards of Appeal, features may be taken from the drawings if their structure and function are clearly, unmistakably and fully derivable from the drawings (see T 169/83, OJ EPO 1985, 193). It goes without saying that it is not possible to derive a negative or missing feature on its own, i.e. without the context of the other, existing features of the claim. It remains to be decided if a combination of features including the negative feature can be derived or not. 』
・T191/93; 図面にのみ記載された事項に基づく補正は不可とする審決
・審査基準;図面に基づいて補正を行う際に,「図面に特定の特徴を描写している方法が,偶発的なものかもしれないから」,注意を払うべきであるとしている
(2)日本の実務と相違
- H13.3.11(平成9(行ケ)56)
- “明細書に明示的な記載がなくても、明細書に記載された装置の動作に関する記載内容を図面と併せて理解可能であり、補正事項が当業者に自明な事項であれば、図面のみの記載からでも、特許請求の範囲の補正が認められる。”
⇒以上から、特に、発明の本質、課題解決、効果に関する部分には、図面に記載されてあっても、明細書中に構造を明確に記載することが非常に重要であるといえます。
この図面の例は、欧州仕様に基づいて日本明細書を執筆(図面の特徴も明細書で明記)すれば大丈夫であったものの、
欧州移行時に困るパターンの一つです。
日本仕様に基づいて日本明細書を執筆(図面に開示されているので割愛)したことによって、 欧州移行時に困るパターンの一つです。
この図面の例は、欧州仕様に基づいて日本明細書を執筆(図面の特徴も明細書で明記)すれば大丈夫であったものの、
特に、発明の本質、課題解決、効果に関する部分には、図面に記載されてあっても、明細書中に構造を明確に記載することが非常に重要であるといえます。