プロブレムショリューションアプローチに対応した”ありがたい”明細書執筆
最近ようやくわかってきたプロブレムショリューションアプローチのステップ
(1)本願と最も近い引例の特定
(2)本願と引例との差異となる構成の特定
(3)特定した構成の差異により達成される効果
(4)この“効果”を客観的課題として、上記最も近い引例、及び上記最も近い引例と他の引例から本願に想到できるか否かを議論
(3)の「特定した構成の差異により達成される効果」は、本願明細書に記載されている構成の効果であることが望ましいです。しかしながら、明細書には、複数の構成a,b,c,dの効果が一つの発明の課題を解決するために必要な効果として、一緒くたに記載されていることも多いです。
例えば、(2)で特定された差異である構成が本願請求項1の全構成a,b,cのうちの構成bであるものの、本願明細書には全構成a,b,cとしての作用効果(≒課題解決)しか記載されていない場合が該当します。
- 多くの発明の場合、図2のように、構成a,b,cがあっていきなり効果が得られるのではなく、図3のように、構成aの効果⇒構成bの効果⇒構成cの効果という段階があってはじめて発明の課題が達成され、元の効果+αの効果、例えば、構成a及びbによる効果A+構成cによる効果αが得られます。
- しかし、実際は図3のように効果を奏する発明でも、明細書には、図2のように効果が記載されている事例が多いです。そして、構成a,bは引例に開示されてい るものの、構成cは開示されていないときには、構成cの効果から、上記ステップ3の効果をプロブレムショリューションアプローチで定義すべき課題を導かな ければなりません。しかし、(1)明細書には三つの構成a,b,cの効果が一緒くたにされた一つの効果しか記載されておらず、この効果 が 明らかに構成cの効果と相違する場合や、(2)一緒くたにされた効果が引例の効果と一致するものの実は構成cには別の特有の効果がある場合には、結構困ります。
- また、差異の効果による効果が狙いとする構成の目的が引例と相反する場合、進歩性違反の拒絶理由に対して有効な反論をしやすいです。
- よって、発明の各構成とその効果を検討する際、それぞれの構成要件の奏する効果を明確にし、明細書内に明記しておくと、その後の欧州移行段階でも有効な対応をしやすくなります。