欧州異議申立人を匿名とするか
異議申立人を提起する際、
本人名、代理人名、代理人と契約した第三者名とを選択することができます。
straw manとして提起可能とされていますが、実際には
『名無しの権兵衛』等、完全に匿名とすることはできず、また権利者本人が請求することもできません。
代理人名を使用すると、普段の出願代理情報から大方予想が付くため、
通常代理してもらっている代理人の名前を隠したいのであれば、当該代理人に第三者の代理人と契約をしてもらい、この第三者の代理人名で異議申立を行うこともできます。
この場合、第三者の代理人と通常の代理人との両者が代理人となるため、
費用は二倍となります。
一方、欧州や他の国の企業は実名で請求することが多いので、
匿名で請求した時点で日本企業だと推測される傾向にあります。
【依頼者の日本企業を異議申立人とすることのデメリットについて】
(1)やはり、特許権者が異議申立人を直ぐに把握可能なことです。
この場合、『特許権者が異議申立人の欧州での販売製品を調査し、権利への抵触の有無に基づきライセンス交渉等を持ち掛けてくる』という事例が過去にありました。
この点は、ライセンス交渉等を持ち掛けてきたり警告書を送ってくるケースは稀であったとしても、
特許権者は、異議申立人を把握次第、異議申立人の欧州での販売製品を調査することが多いようです。
(2)なお、実名で異議申し立てを提起しても、現地代理人は代理人として参加可能です。
欧州の企業が異議申立側である場合も、口頭審理には異議申立人である企業担当者ではなく、代理人のみが参加するケ-スが多いようです。
また、依頼者の日本企業が欧州内にブランチ等を所有されていない場合、異議申立書を貴社名で提出したとしても、手続きには代理人を立てる必要があります(EPC133、134条)。
【依頼者の日本企業名を異議申立人とすることのメリットについて】
代理人を立てる場合、実名を異議申立人とすることの大きなメリットは、
手続き面、手続き以外の実体面のいずれにおいても見当たらないというのが率直なところです。
上記メリット及びデメリットを勘案すると、
異議申立人として実名を用いる欧州企業の真意を問いたくなるところではありますが、
主な理由として、実名を知られることを懸念しない傾向にあること、及び代理人を介さずに自身で作成した異議申立書を提出していることの二点が考えられます。
実名とするか現地代理人名とするか、将又第三者名とするか、
色々と迷われる日本企業が多いのですが、最後には現地代理人名とされることが多いです。