特許権等の欧州圏内での移転と権利行使について
日本の特許法下では、第三者が有している特許権に基づく権利行使を行いたい場合、
当該権利の移転登録を行う、もしくは専用実施権の設定を行う、
の2パターンが存在します。
権利の移転登録の完了に時間を要する場合、専用実施権に基づき権利行使することが考えられます。
欧州内では、
権利行使を逸早く行いたい場合、権利移転の手続きが書類の不備等によって大幅に遅れることも懸念しなければなりません。
日本と同様、ドイツでは、日本の専用実施権に相当する規定があり、
当事者間の契約(排他的ライセンスである旨の明記)さえあれば、
権利移転の登録を待たずして、専用実施権の譲受人は権利行使することが可能です。
こうした国で、かつご懸念されている事項が権利行使であれば、
書類不備等に伴う権利移転の遅延を考慮する必要性は低いです。
一方、フランスでは、
当事者間の契約があったとしても、移転登録がなされるまでは
譲受人は法的地位がなく、権利行使等を行うことができません。
よって、移転登録の遅延による制限が大きいため、権利行使の観点からは書類不備等に伴う権利移転の遅延を考慮する必要性が高いです。
このため、権利移転が行われる国と、欧州特許をどのように用いるかによって、
権利移転や専用実施権の設定に際して権利者や非権利者と契約書で考慮すべき事項は変わってくるので、上記相違に基づき戦略的に権利行使や契約作成を行うことをお勧めします。