弁理士葉隠れ道~欧州・ドイツ篇~

日本と欧州との懸け橋となるべく、慣れない欧州で七転び八起きしながらも欧州のローファーム(特許法律事務所)で何とか励む日本弁理士の日記です。欧州の現状の紹介や、海外での勤務を夢見る方々の参考になれば幸いです。 <免責事項>本ブログは、管理人である私一個人の見解を記載したものであり、内容について管理人の勤務先が責任を負うものではありません。また本ブログの内容は無保証です。ご利用は自己責任でお願いします。ご理解のほどお願いします。 ご意見等はこちらまでお気軽にどうぞ。minmin70707アットマークyahoo

(概要篇)欧州特許出願とドイツ出願との主な相違事項

欧州特許出願は、28カ国の指定国を指定できることから、多くのエリアで権利化が必要な場合は欧州特許出願が優位ですが、実際に製品の販売流通拠点はドイツのみというケースも多いです。

このため、特に費用削減の観点からドイツ出願を検討される方も多いです。

 

以下大まかな相違についてです。

 

(1)手続き言語

日本の代理人、出願人にとって、一番のネックとなるのが、ドイツ特許商標庁との手続き言語がドイツ語であることです。

 

PCT出願から直接ドイツに移行した場合、

審査主体がドイツ特許商標庁なので、ドイツ語の先行文献が引用されることが多いです。

特に医療分野ではドイツ語のものが多いですが、自動車や電気製品等では日本の文献が引用されることも多いです。やはり、日本での出願件数が多い分野では、それに応じて日本語の文献が引用されやすくなります。この点は、EPC移行でも同じです。

 

 

(2)費用面

ドイツ出願は出願に要する庁手数料が欧州特許庁の約10分の一と庁手数料は大幅に低額です。

一方、日本語からドイツ語への翻訳が高額なため、翻訳費用を出願費用に含めると、

 

欧州出願;庁手数料+翻訳費用 =ドイツ出願;庁手数料+翻訳費用 ×50%

 

ほどとなります。

 

しかし、ドイツ出願の場合、

出願後の拒絶理由通知等を全てドイツ語から英語もしくは日本語に翻訳したので、ものすごく高額になったという事例もあります。

この点、オフィスアクションの詳細は現地代理人に任せて、要点のみを英語や日本語で提供してもらうことをお勧めします。

 

 

(3)PCT出願からEPCに移行する場合と、PCT出願からドイツに移行する場合との手続上の違い

 

  • 移行期限

ドイツ移行;優先日から30か月以内

EP移行;優先日から31か月以内

 

  • 審査請求期限

ドイツ移行;出願から7年以内

EP移行;EPは移行まで

 

  • 補正機会

ドイツ移行;原則としていつでも補正可能

EP移行;サーチレポート前の補正は不可。審査官の同意等の制限があり