弁理士としての方向付と転換期
数Ⅱのベクトルは大の苦手でしたが、戦略という観点で“ベクトル”という言葉を使うのが好きな私でございます。
ドイツを目指した理由として、
・明細書作成・中間対応業務として定型化しつつある日本弁理士の新しいベクトルを開拓する
・日本以外で世界の製造業を牽引する国
の二点が主にありました。
まだ未達成ですが、勿論、欧州やドイツの法制度、実務を学ぶことも主要目的の一つにありました。
新しいベクトルを開拓するということは、既存のベクトルから離れるものですが、
いざ離れたり、欧州やドイツの実務に触れる機会が少ないと、
やはり弁理士としての根幹業務は、明細書作成・中間対応業務であることを痛感します。
そういえば、昨日会合でお逢いした日本人はドイツ語が堪能な故、
ドイツ特許事務所でドイツ人と全く同じように中間対応等をドイツ語でこなしているようで、
むしろ日本人としての特性を生かして、私のように日本向けの窓口、営業・企画業務をこなしたい人もいらっしゃるようです。
その点、日本向けの窓口、営業・企画業務としてそれに専属させ、権限を与えることで他所との差別化を図る、という観点では大変画期的な事務所で奉公させて頂いたと思っています。
ドイツの出願件数は、欧州出願は2-3%で毎年逓増、ドイツ国出願は20%ほどと、いずれも右肩上がりにあります。
このような背景では、今でも昔の日本のように“黙っていれば仕事が来る”≒“新規開拓・営業はさほど重要でも大変でもない”、と思っている経営者もドイツでは多く、
新規開拓の困難性や新規開拓による莫大な金銭的貢献に対する評価が、上記既存ベクトルの業務(所謂、クライアントにチャージできる弁理士)に対する評価よりも低い点は、
ドイツ全体ではまだまだ否めません。
営業や交渉事を通じて学んだことは、
営業の場は自分を売り込む場でも仕事を取る場でもなく、
あくまでクライアントの一言一言に注意深く耳を傾け、クライアントの“問題を解決する、”ニーズに応える“というスタンスで、問題やニーズを汲み取って、
信頼関係を築く場だということです。
自分たちのやりたいプレゼンを持って行って喋って終わり、
では、あまり意味がないように思われます。
ローファームとしての格調、質や料金等も勿論大事ですが、
それ以上に、クライアントが一緒に働きたいと思えるか、
が選定に際しての要になっているように実感します。
ドイツに来て早二年、家族の病気や突然の逝去もあり、心労の多い年でしたが、
また、ドイツで働く日本人にとっては、ドイツ流の緩い雰囲気を乱して契約労働時間を完全無視して日本流に過剰サービスで働く鬱陶しい新人・後輩ではあったかと思いますが、
ドイツで働く機会をくれた現事務所への奉公と思い、何かと不満を抱えながらも二年間、
出張中、営業先へ毎晩2時まで礼状を書いたり、週末を潰して自宅で個々のアポに応じたプレゼンを作成したりと、
励んできて本当に良かったと思っています。結局、生半可な効率重視に走ったところで、相手が人である場合には、費やした分しか返ってこないようです。
営業もはじめての体験でしたが、ドイツから日本人がわざわざ来てくれたという特権もあり、
おかげさまで僅か二年の間に、知財の最先端でご活躍される数百名の知財部、先生方にお逢いでき、ドイツに居ながらにして日本でのご縁が広がったことが一番ドイツに来てよかったことです。
言ったもの勝ちと言われるドイツ社会で、実際に言ったもの勝ちが否めないドイツですが、
観てくれている人は何処かで観てくれているようで、
日本、海外からと色々と有り難いお話があり、
今年は、33年の人生で一番のモテキでした(あくまで仕事面です)。
現在、自身の弁理士としてのベクトルを修正・転換する転換期にありますが、
次のステップに進む前に、どのような弁理士でありたいかを改めて考えねばと思っているところです。