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弁理士葉隠れ道~欧州・ドイツ篇~

日本と欧州との懸け橋となるべく、慣れない欧州で七転び八起きしながらも欧州のローファーム(特許法律事務所)で何とか励む日本弁理士の日記です。欧州の現状の紹介や、海外での勤務を夢見る方々の参考になれば幸いです。 <免責事項>本ブログは、管理人である私一個人の見解を記載したものであり、内容について管理人の勤務先が責任を負うものではありません。また本ブログの内容は無保証です。ご利用は自己責任でお願いします。ご理解のほどお願いします。 ご意見等はこちらまでお気軽にどうぞ。minmin70707アットマークyahoo

今後の方針と後進への標 ~将来欧州で働きたい人に向けて~

 

日本出張で一気に視界が開けましたが、

その前は欧州弁理士の受験資格の件で何かとこれまでの予定が大幅に狂い、結構思い悩んでおりました。

欧州弁理士の受験資格を得るには、欧州の特許事務所で、

-実務経験3年

-実務経験10年

と2つの道が存在します。普通に工学系で勉強してきた人は前者3年のコースを歩むことができます。例えば文系の大学を卒業した場合とそれ以外の場合は後者の10年のコースを歩むこととなります。

一方、最近欧州特許庁の内部規則に厳格な変更があり、ドイツ人ですら現地の大学を卒業しても3年で受験資格を得ることができない人が増えています。合格率で絞るのではなく、受験資格で最終合格者を絞るといったところでしょうか。

 

さすがに10年(あと約8年)は待てないなと気が焦り

受験資格を満たすための学位取得しようとしたり(ドイツの夜間大学や通信大学の可能性)、

ドイツでの10年を無駄なく過ごさねばとLLM、果ては日本の通信制大学、公証翻訳士等、考えすぎて血迷った方向に行きそうになっておりましたが、

 

日本で多くのニーズから自身の立ち位置を再確認し、

結局は、現在の業務、新規開拓、営業スキル、マーケット(特にこれ)、マネジメント、コーディネートのスキルの向上に専念しつつ、ドイツ語や英語の勉強もしながら、

実務力を身に付けつつ、第二の道として実務経験10年を長い目で進もうと思います。

逆に、欧州でご活躍される日本弁理士はこぞって欧州弁理士の道を歩んでいるので、

10年間の間はクライアント獲得力等、差異化の方向性を見出す予定です。

塞翁が馬の如く、事が良い方向に運ぶとよいです。

 

そんなわけで、最近はアマゾンから海外便で発送したマーケティング本30冊余りを読みつつ、ドイツ語の勉強を少しずつ進めています。

 

15歳の時には既に弁理士を志してはいたものの

⇒南極に行きたく気象調査員として○○志願(英語大嫌い)

⇒教育コース2年を必死の思いで歴代主席で修業したにもかかわらずなぜか歴代末席が大抜擢され自暴自棄

⇒やはり初心に帰って弁理士(英語大嫌い)

⇒LLMへの留学とその後の海外就職を検討するも、LLM≠現地就職(100分の1の確率)であることを多くの経験者から教わり、費用と時間をかけてLLMに行くくらいなら現地事務所への直接就職へと方針転換

⇒英語勉強開始 I am benrishi desu の超初級レベルからのスタート

⇒念願叶ってドイツ

と、紆余曲折も甚だしいキャリアでしたが、

最終的には弁理士として多少は国際交流も図りつつ念願の地に到着することができたので、

そんなに苦労しなくてももっと良い到達法としてこれから欧州、特にドイツで弁理士として働く方に標を自他の経験をもとに示すことができればと思います

 

以下本題。

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日本帰国時等、大変に有り難いことに、このブログや寄稿コラムの読者や機会や海外勤務にご興味のある方にお逢いする機会があります。というわけで、弁理士としての海外での働き方のパターンについて、自身や欧米で御活躍される他の弁理士の経験をもとに以下纏めます。

 

私も、日本でお世話になった所長から転職時に、『日本語の使える便利なコーディネータ(便利士)として良いように使われるだけで終わるな』の重い一言を頂戴しましたが、

この一言は今後のことをよくよく考える要帝になっています。

 

 

  • 私のようにコーディネータとして日本の事業進出のお手伝いを目指したい方

延ばし延ばしになっている出張日記で後述する予定ですが、

日本で多くの知財部や事務所の方々にお逢いして気付いたことは、

私のように現地で勤務する日本弁理士や日本人スタッフに一番に求められることは、個々の案件の担当ではなく、

むしろ、それらは同僚の現地代理人に任せつつ、

・ちゃんとクライアントの指示通りに案件が回っているか、細かいニュアンスを伝えられるかのモニタ、

・緊急や重大な案件があったときに重要案件の入口及び出口としての補佐、現地代理人を上手く、早く、クライアントのニーズに沿って気持ちよく働いてもらう

・日本人としてまた日本実務の経験を活かして機転を利かせて先読みしてクライアントの痒いところに手が届く作業

 

要は、

ドイツの事務所をクライアントの要求に応じて効率よく動かし、要求されたアウトプットが最大限出せるようにマネジメントすること

が日本の企業、事務所から一番期待されていることです。

 

この方向性で欧州、海外の特許事務所で働くメリットは、以下となります。

(a)日本人として、欧州の前線基地として日本企業の欧州進出を微力ながらも支援しているという大和魂の燃える業務に携われること

(b)個々の案件に深入りする機会は少ないですが、権利化はもとより、ライセンス、訴訟、権利譲渡、異議、意匠に商標、調査等、幅広い案件の情報が自身を介して流れていくので、それを上手く吸収さえすれば、非常に多くのことを学ぶことができます。

(c)事務所、企業問わず、日本の多くの方々にお逢いすることができること、

 特に、日本の特許事務所から一所員が来ましたというのと、ドイツから来ましたというのとでは、お逢い出来る方の層がまるで違ってきます。自身のバックにあるドイツ、欧州という国のお蔭と自身の立場の希少性のおかげなので、あまり舞い上がらないよう謙虚に振る舞うことが大事だと思います。

仕事を通じてお逢いした方とのご縁は事務所にとっては資産でしょうが、私にとってはそれ以上の個人的な財産です。

(d)新規開拓力、人脈力は身に付くので、将来独立されたい方は良いかもしれません

 

弁理士としてのスキルアップ、キャリアアップを考えるとどうしてもオフィスアクション対応等の実務力アップと考えてしまいがちですが、

 営業力、顧客対応力、マネージメント力もまた弁理士、事務所員として大事なスキルです。

オフィスアクション対応だけではなく、異議申立、鑑定、訴訟、ライセンス、権利譲渡、意匠、商標と多岐に亘るクライアントの仕事に応じて、所内各スペシャリストの能力を最大化しつつ気持ちよく齟齬なく働いてもらうコーディネータ的なスキルは、案件の入口と出口を担う窓口役だからこそ磨ける技です。

 

【標】

この(1)の道を目指す場合、日本の事務所や企業のニーズを汲む取れるセンス、対人能力や日本明細書の読解等が要求されるので、

英語やドイツ語、海外案件の経験よりも、日本で実務に励みつつ、

幅広い人脈を構築し、日頃から皆のニーズを吸収し、欧州等の現地事務所で働いた場合にどのように反映していくかを考えていくことが、欧州に赴任した場合の基盤、良い備えになると思います。

語学力も海外案件の実務力も大したことのないミュンヘン侍が何とかドイツでほんの少しは評価されて解雇されることなく今に至っているのは、この辺りを日本に居た頃から準備し、面接でもアピールしたことが大きいと思っています。

 

 

某欧州の大手特許法律事務所の経営者が、マーケティングやコーディネータとして働いてくれる日本人の潜在需要は、少なくとも10か所の事務所には存在すると言っていたので、

この役割が出来ることを上手くアピールできれば、将来的に欧州で勤務できる可能性もあるかもしれません。

 

昔と違い、黙っていれば仕事、クライアントが増えるという時代は欧州も終わっており、

ポートフォリオ開拓は何処の事務所にとっても最重要課題の一つになりつつあります。

 

  • 日本人ならでは強みに拘らず、あくまでもアトーニーとしての道

クライアントのニーズは別として、こちらは真の国際人の道だと思います。

つまり、欧州でドイツ人等、現地代理人と肩を並べて口頭真理に出廷したり、案件をこなすタイプです。

また、日本企業に限らず、他の各国のクライアントを担当します。

日本で日本弁理士に合格した中国人や韓国人が中国や韓国の案件ではなく、日本明細書を執筆したり、外内、内外業務

 

求人もないのに自身からアプローチした場合、この(2)のパターンになる場合が多く、日本関連案件を主に担当する場合が殆どのようです。

 

 

【標】

この(2)の道を目指す人は、日本の高校、大学時代にドイツ語をしっかりと勉強して、

大学や大学院はドイツの工科系を卒業し、一年間以上、大学で研究員もしくは産業界で働き、

その後にドイツの特許事務所で実務経験を積みつつ、

ドイツ弁理士の道を目指すことをお勧めします。

現在のところ、私の把握する限りでは、(少なくとも5年以内に一人、10年以内にもう一人は誕生する予定ですが)

両親共に日本人の日本人がドイツ弁理士になった例はまだありません。

 

ドイツ特許や訴訟に関する情報量はまだまだ圧倒的に日本で不足しているので、

こうした情報提供もしていけると益々活躍の道は大きいと思います。

 

ただ、日本のクライアントからすれば、

-ドイツ語のできる日本人の日本弁理士兼欧州弁理士

-日本語のできるドイツ人のドイツ弁理士

の二パターンの現地代理人が存在している場合、重要な案件は後者の日本語の堪能なドイツ人に依頼したい、という要望もあります。

 

また、道のりは長く険しいので、日本ではなくドイツにそこまで入れ込むだけの意欲とドイツに拘る理由がなければ、同じ労力を日本でのキャリアに掛けた方が多くの実績を残せると思います。。

 

 

年齢について

公には何処の事務所も年齢制限を設けていません。

しかし、長期雇用を好むドイツの特色、また人件費を抑える観点から、20代後半~30代前半を理想とする事務所が多いです。

40代に突入すると、企業、事務所問わず、ドイツでも転職が難しいようです。

 逆に、年齢、キャリアを重ねるほど、それに見合ったスキルや経験等を面接で示す必要があります。

 

 

 

今は上記2つの方向性があると思いますが、

今後弁理士の役割もさらに広がり、もっと多くの選択肢が出てくると思います。

そうなると、むしろ弁理士としての既存の業務や肩書を忘れて行動した方が、

弁理士の枠を超えた仕事ができるように思います。そういえば、菅先生は弁理士として肩書とは別の方向性で実績を残され、最後には総理にまでなられましたね。

 

 

 

 

余談ですが、私はまだ独身ですが、将来を持ったら、

ぜひ(1)と(2)を兼ね備える欧州と日本との懸け橋になる弁理士になって欲しいなと思っています。

 

 

仕事内容、それに必要なキャリアもそれぞれですが、

 結局は自分が何をやりたいか、

クライアントに何を求められているか、

 最終到着地点をどうするか、

だと思います。