弁理士葉隠れ道~欧州・ドイツ篇~

日本と欧州との懸け橋となるべく、慣れない欧州で七転び八起きしながらも欧州のローファーム(特許法律事務所)で何とか励む日本弁理士の日記です。欧州の現状の紹介や、海外での勤務を夢見る方々の参考になれば幸いです。 <免責事項>本ブログは、管理人である私一個人の見解を記載したものであり、内容について管理人の勤務先が責任を負うものではありません。また本ブログの内容は無保証です。ご利用は自己責任でお願いします。ご理解のほどお願いします。 ご意見等はこちらまでお気軽にどうぞ。minmin70707アットマークyahoo

10.某特許法律事務所でのお仕事

Samrai特許法律事務所での一日は、剣の素振りから始まります。以下、真面目に続きます。

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グ-テンモルゲン!から始まる一日。

Samrai特許法律事務所(仮称)はドイツに位置する特許法律事務所ですが、旧来より日本の自動車関連会社、カメラ会社をはじめ、実に多くの日本企業の欧州進出を、訴訟や日本の知的財産の権利化の面でサポ-トしてきた歴史があります。

私のSamrai特許法律事務所(仮称)での仕事は、“日本人弁理士+ミュンヘン”という特殊性から、

大変に幅広く、かつ専門的です。

・技術的内容や法的内容に関する翻訳、通訳、会議への出席、日本から来独された・VIPの方々との会食、

・日本のクライアントに対して欧州やドイツの法制度の説明、

・セミナ-の主催、

・欧州特許庁との技術的、法的内容の答弁、

・ドイツ弁護士と連携しての訴訟支援、一旦成立した瑕疵のある他者の特許を取り消すための異議申立

等々と、

専門家、翻訳通訳家、コ-ディネ-タ、本当に幅広い役割があります。

こうしたことから、事務所の顔として働いていることを実感することも多いです。

また、日本の法制度や日本語で記載された技術文献について、Samrai特許法律事務所(仮称)のドイツ弁理士から相談されることがあるので、その際は、日本での実務経験を通じて習得した知識を活かして解説しています。“誰もが日本を一歩出れば日本の代表”、そんな言葉が身に染み入る日々です。

現在、私のメインのお仕事として、Samrai特許法律事務所(仮称)を代表するシニアパ-トナ-の下で、

企画戦略も担当させて頂いています。この業務で培った経験とスキルを活かして、

将来的には、欧州に進出する企業に対して、知的財産戦略のコンサルティングも提供することを次のステップとして考えています。

このコンサルティングを行う為には、

(1)日本の企業、特許事務所、法律事務所の文化、背景、ご要望や事業活動と、

(2)欧州及びドイツの知的財産の動向、法制度、経済状況と

を最低限熟知している必要があるので、まだまだ勉強することに溢れています。

最近、当所でのお仕事が始まって未だ数ヶ月なものの、

私が勤務し始めたことを切っ掛けとして、知人やそのお知り合いの方から新しいお仕事を頂けるようになったり、ご相談を受けるようになりました。

これは、当所でお仕事をしていて特に嬉しかったことです。

また、“ドイツに日本人弁理士が居てくれて助かる”と感謝される度に、遠路遥々ドイツに来て良かったと実感します。

『Win-Winの法則』と言うものがありますが、

当所にも、日本の企業や弁理士の方々にも、どちらにも喜んで貰い、Win-Winとなる状況を創り出せるように、仕事に学業にと一層に励む所存です。

これは実話かつ少し自慢なのですが、

転職する前に、“欧州で一番良いと思う事務所を教えてください”、と外国案件を扱っている特許事務所のご担当者に聞いて回ったことがあります。勿論、転職することは内緒でしたが、私が転職先を告げる前に当所と応えてくださった方も多く、非常に嬉しく思っています。こうした経緯もあり、何ら迷うことなく、当所に骨を埋める覚悟を決めてドイツに渡ることができました。

ドイツの就労環境

ドイツでは有給取得は義務です。有給を取得しなければならないので、年の初めに何処で有給を取得するか計画し、それに応じて仕事をマネジメントする方も多いと聞きます。

有給を消化していない場合、雇用主がドイツ政府から勧告されてしまいます。

また、日曜の仕事は基本的に違法です。

私の雇用契約は、週40時間~45時間勤務。

10時~16時がコアタイムですが、私はなるべく朝8時前には出勤しています。

仕事の管理は、個人の自主性に委ねられており、

与えられた非常に大きな裁量の中で結果を出すことが要求されます。

驚くほどに自由で快適な環境です。

一方、割り当てられている仕事を限られた時間で終わらせなければなりません。

私は、こうした自由時間の中で、与えられた役割をこなしつつ、

余った時間で企画提案等を行っています。

仕事が終わった時間が退社時間となり易い日本の風土と比べると、

時間管理が非常に厳しく、また個々人が自分たちの時間の価値に重きを置きつつ、

雇用者側も職員の時間という“資産”に敬意を払っているように感じます。

これがドイツ人職員の自主性を促し、日本人1人あたりの総実労働時間が平均1728時間、英国(1625時間)に対してドイツは1413時間と先進国の中でも一位、二位を争う短さです。一方、アメリカ合衆国ドルの為替レートでは世界第三位、購買力平価 (PPP) ベースのGDPでは世界第五位といったドイツの地位を確立している一因なのだと思います。