特許管理クラウドサービス ATMS PROPAS
特許管理クラウドサービス ATMS PROPAS(アトムス プロパス) : 富士通 - Fujitsu Japan
特許事務・人事等を極限まで自動化することで、
事務所の収益率は高まります。
また、これまで現地代理人に対する見栄え等もあり、オフィスのロケーションも重要要素でした。これに伴い維持費用が嵩張り、事務所の最大運用基盤はオフィス費用と人件費の二点となっています。そして、このオフィス費用が料金に跳ね返ったり、人件費の削減(給料削減)に伴う人材流出の要因にもなっています。
日本と欧州、また日本国内のネットワークを繋ぐハブになって新しいつながりを創り出すことを目指して欧州に来ましたが、
企業憲章を共有する個々の所員が在宅や地元に地方展開しつつ、
それらを接続する経営者・管理者がクラウド等を通じてハブとして機能することで、
新しい可能性が見えてきそうです。
単一効制度と統一特許裁判所について
来年にははじまる、はじまらないという議論を10年以上続けてきた、欧州圏内で一つの特許効を認める単一効制度ですが、ついに2017年には施行されそうな予感です。
また最近盛り上がってきてはいますが、
正直、欧州特許庁に対する特許出願は、オプトアウト(適用除外)が利かなくなる2024年以降、激減すると思っています。
ロンドン協定が施行されたときも、欧州全体の特許事務所の代理件数が減少した時期がありました。そして、出願減少はそのまま独立採算性の欧州特許庁の予算減少に跳ね返るので、結局は、オプトアウトの適用期間も延長もしくは無期限に延長され、現行制度と並行することになると思います。
単一効特許施行に伴い、特に2024年以降に出願件数が減少すると思われる理由の一つは、単一効特許のメリットとしてコスト削減を欧州特許庁や受任を増やしたい英・仏代理人が謳っていますが、単一効特許の費用は上位4カ国指定分に相当する費用+翻訳文:平均2000EURです。実際、欧州移行後、指定される国数の平均は約3カ国である一方、4カ国以上指定する出願人は殆ど製薬会社等であり全指定する傾向にあります。
この全指定する出願人が単一効特許のメインユーザになり、制度を売る側としてもコストメリット(全指定した場合と比較して約25%の費用)を謳いやすいのですが、欧州で全指定するということは欧州全体が重要な市場であり、主要製品に係る特許だということです。現行制度では、係争事案や無効審判・無効訴訟は各国レベルの管轄だったので、ドイツは特許権者より、イギリスは条文解釈等、或る程度、判決の予測可能性が高い状況でした。このため、現行制度制度の下では、フランスでは権利行使したところ特許が無効となって取り消されてしまったものの、主要製造国のドイツでは特許が生き残り損害賠償も認められたのでドイツでは事業を継続できる等、リスクが分散される傾向にあります。
一方、単一効特許の裁判管轄は、統一特許裁判所UPCにあり、ここで侵害訴訟や無効審判(無効訴訟)が管轄されます。統一特許裁判所の裁判官は、欧州各国から裁判官がパートとして兼業することになる予定ですが、いろんな国の裁判官が集まって判決を出すので、その結果は予測不可能です。特に、世界一のプロパテント国家と謳われるドイツ、特にデュッセルドルフ裁判所の裁判官よりは知財訴訟の経験は浅く、特許権者寄りではない判決が下されることとなります。欧州一の製造国、経済大国、政治国がドイツであることを踏まえると、少なくとも、ドイツ+欧州その他1~3カ国が主要市場である企業にとっては、むしろ、単一効特許ではなく、パリルートもしくはPCTルートでドイツ特許出願で権利を取得した方が、安全と言えます。
施行が近づくにつれて日本での欧州代理人のセミナーや営業が盛んになると思いますが、
大体は、単一効特許で訴訟等の代理のチャンスを狙っている英国や仏国といったドイツ以外の欧州代理人によって行われると思います。現地代理人の情報もまだマチマチで、代理人に間で意見が分かれていたり、情報が相違することもあるので要注意です。日本語で情報を収集したいのであれば、JETROデュッセルドルフ支部から発信されている情報が、欧州特許庁が提供した情報に基づく最新かつ高精度な内容なので、こちらから情報を得ることをお勧めします。
2017年の単一効特許の施行後、どう市場が変わるか楽しみではありますが、
ますます戦略的な出願や情報収集が必要となりそうです。
ドイツに観る中小・中堅企業の ”脱” 垂直系列化
『ドイツの自動車部品メーカー、ボッシュは世界100社余りの完成車メーカーにブレーキシステムなどの主要部品を供給している。売上高の77%がドイツ以外のメーカーへの納品によるものだ。そのおかげで、ボッシュは自動車部品業界で不動の世界1位となっている。』
中小企業の競争力低下が韓国製造業に危機をもたらした大きな原因だそうです。
日本の中小企業の競争力向上が日本の製造業のさらなる発展に繋がり、
世界進出時の要が事業先での知的財産権の適切な保護にあります。
海外勤務希望の弁理士(国際派弁理士)と今後について
お問い合わせの多いトピックですが、ドイツに至るまでの経緯を含めて以下ご参考まで。
(国際派弁理士について)
まずは自身の経緯から。
私は弁理士試験勉強中、訴訟系か国際派の弁理士を目指していました。
訴訟系を辞めた理由は、国内の知財訴訟の減少を予測したことと、民訴を少し体験して訴訟に向いていないと思ったからです。日本には、米国やドイツと違って、トラブルになったら取り敢えず裁判で争うという文化もありませんし、むしろ訴訟せずに解決の道を探れるのであればそちらの方がいいのかなとも思っています。例えば地方は地方のネットワーク、知財業界は知財協のネットワークである程度、訴訟が未然解決されているので、それはそれでよいのかもしれません。ただ問題は、こうした日本での環境が当たり前だと思って海外に進出するとかなり痛い目にあうということです。
また二点目の選定理由として、当時、若干、家裁関連の弁護士にお世話になったのですが、完全に相手が悪い場合でも、そんな事案は倫理に沿わないので受け付けませんという代理人がいらっしゃる一方、被害者側の問題を洗いざらい取り上げ、被害者側に瑕疵があるように弁護してくる代理人もいるので、そうした仕事はしたくないなと思ったものです。逆に、『そんな事案は倫理に沿わないので受け付けませんという代理人』にこそ担当して欲しいと私なら思うので、クライアントを選ぶ人が結局は選ばれる、という気がします。
一方、既存クライアントからのニーズから、外国実務、判例、審査基準を踏まえた明細書を書いてほしい、この技術は米国が最重要だから、米国での訴訟やライセンスを踏まえたクレームを執筆して欲しい等、多くの要望を頂きました。これが、英語がさっぱりで、外国特許実務経験がゼロでもあった私が外国の特許制度や実務に興味を持つようになった理由です。
BRICs、中国、米国、欧州の法制度を勉強する勉強会を所内で立ち上げ、
これらの実務や法制度に沿った明細書について所内で研究していましたが、
どれだけ書籍や文献を読んで勉強するよりも、OJTには敵わない、当時属していた大手特許事務所の外国部門も現地代理人任せのところがあったので、
『それでは現地代理人に弟子入りして容赦なく鍛えて貰おう、
重要になりつつ外国での権利化や係争事案を日本との懸け橋として支援しよう』
という決心に至りました。
当時の特許事務所から派遣してもらうことも検討しましたが、
所詮はお客さん扱いなので容赦なく鍛えてもらえない、と思ったので現地代理人のもとに飛び込むことになりました。
一点予定外だったのは、骨を埋める覚悟で飛び込んだ最初の事務所では、
完全に営業・マーケティング、日本向け窓口要員となってしまったので、懸け橋としては機能したものの、『それでは現地代理人に弟子入りして容赦なく鍛えて貰おう』の部分が全く得られず、二年で転職に至ったことでしょうか。
同じく予想外だったのは、二年間、存分に自由に営業活動等は担当させてもらえ結構派手に動けたので、幸い、欧米の幾つかの有名どころローファームから声がかかるようになったことです。
欧州はこれまで、昭和の日本のように出願件数が右肩上がりで弁理士の極端な増加も規制されているので営業に力を入れる必要はなかったのですが、日本からの出願件数が減少したり、経営バランスの観点から、新規開拓やマーケティング戦略の必要性が増えてきたのだと思います。
現在は、自身の処理速度と吸収能力が追い付かないほど多くの実務案件に触れる日々で、優秀なアトーニーにみっちりと鍛えて貰っているので、
『それでは現地代理人に弟子入りして容赦なく鍛えて貰おう、
重要になりつつ外国での権利化や係争事案を日本との懸け橋として支援しよう』
の初志貫徹に近づいていると思います。
このように海外の転職では予期しないことも日本での転職と比較して多いので、
或る程度、ビジョンを決めて、随時、軌道修正していくことは非常に重要だと思います。
(米国・シンガーポール・ドイツの狭間で)
話は戻って、なぜドイツかということですが、
一つはヨーロッパが好きだったからです。
10年前にこの業界に入る直前、初欧州として訪れたベネチアで感動し、『絶対に欧州に戻ってくる』と一人勝手に誓ったのが大きいです。
実体的な面では、欧州単一効制度、日本と並ぶ工業国、確立された法制度、日本弁理士の希少性が挙げられます。この読みは今でも正しかったと思っています。
当時は、マックスプランク研究所のLLMに留学してから仕事を見つけることを検討していましたが、年間学費約400万、卒業しても仕事を見つけるのが難しい・日本では有名でもドイツではあまり評価されない、という事実を知り、費用対効果の点から見送った次第です。
実際に働いて思いますが、工学修士はあった方が断然いいですが、
学位だけではなく職務経験が非常に重要視されます。
なので、ドイツや欧州で将来に勤務したい方は、
今の目の前の仕事に一所懸命に取り組んで、職務経歴書に記載できる職位、実績やスキルを磨くのも一つの近道だと思います。あと、営業も期待されるはずなので、そのあたりの下ごしらえをしておくとなおいいと思います。
私は留学を選ばないこととした分、この二点はかなり力を入れて取り組みました。
幸運が幸運を呼んで、この二点が揃い、ドイツに絞った頃に、
『ドイツで働くことに興味ありますか?』
と夜中の0時、FB経由で声がかかったのでありました。
(英語もドイツ語も当時からさっぱりな状態でしたが、、QAを1000パターン用意して、一次スカイプ面接ではPC周辺はQA集の付箋だらけになる始末で奇跡的に乗り切りました)
高校の頃、ある心理学者が『夢を紙に書き目の見えるところに貼っておくと90%実現する。あとの10%は勇気と行動力だ』
と話されていたのを聞いて依頼、手にもスタバのお手拭きにもメモするメモ魔になってしまいましたが、某家裁事案で病んでいた弁理士試験の受験生時代、
自身の名刺に「弁理士 ミュンヘンオフィス」と勝手に手書きで加えたもの大事に持ち歩いていましたが、
その後、2年間の間に両方が実現したことを考えると、20年近く前の講演で話された心理学者の理論に何等かの因果関係、相関関係を見出したくなります。
(米国という選択肢)
一番最初に思いついた渡航国は米国でしたが、
・既に日本弁理士が溢れて必要性が低いこと、
・LLMに生活費含めて約1000万円かけて留学しても、アイビーリーグのLLMを卒業しても米国事務所に応募して返答のある確率は1%であり、仕事を見つめるのが非常にムズカシイく基本ペイしないらしいこと(知人は無給で1年間米国ローファームに席だけを置かせてもらって後は只管試験勉強してたようですがこれが現実のようです。キャリアとしては記載できますが、実体的には米国実務を学べず、空白の一年間になってしまい勿体ないようにも思えます。)
・留学も結局は仕事を見つけるため、次の仕事に活かすためだと思いますので、留学そのものを目的にしていた自身の考えをこのとき改めました。肩書があった方が勿論よいですが、弁理士は職人業でもあるので、現地代理人のもとで学べるOJT(しかも給料を貰いながら!)ほど価値の高いものはありません、
・米国で本格的に働きたいのであればJD(法務博士)の三年コースで学んで特許弁護士になることが必要であるものの、約3000万円は必要とのこと、一方、米国特許弁護士の激増で3年間の無収入+約3000万円のペイはまず期待できずリスクが高すぎるとのこと、このプロセスを得てようやく米国特許弁護士になったとしても、あくまでもアメリカ人の米国弁理士・米国特許弁護士のアシスタント的立場でしか仕事ができないのが現状であること、
・費用を抑えるべくLLM(1年)で留学しても、通学生の法学士(中央大等の通信はNG)か日本弁護士資格を持っていないと、米国弁護士の試験を受験できないこと
・当時、日本の弁理士資格を持っていればLLMに行かずともカリフォルニア州弁護士を受験することができ、コスト削減の最終案をこの道を目指そうと考えましたが、それも2014年の米国裁判結果で、『否』となったこと
以上から、いろんな人に会ったり文献にあたって調査した結果、米国は選ばないこととしました。
なお、『米国や欧州で働くにはどうしたらいいか、教えて欲しいです!』という方もけっこういらっしゃるのですが、その際に、既にいくつかのローファームに応募済であったり、上記情報は最低限調査済であったり、採用側に自身のやりたいこと、強み、自分が貢献できる具体的なビジネス案を提案できるぐらいではないと、そもそも欧州や米国のスタイルには合っておらず、現地のローファームからも歓迎されず、その後の仕事も厳しいのかなと実感します。
(シンガポール)
シンガポールは、アジアの知財拠点の構想が当時進んでおり、
所属していた日本の事務所も現地オフィスを設立することを検討していたので、
その現地オフィスの設立と運営に携われることができればかなり面白いのでは、と思っていました。
ちょうど前事務所(ドイツで最初に務めたローファーム)の話があったとき、シンガポールの話も上がっていたので、シンガポール特許庁等を訪れたり、色々と調べましたが、
・国土が狭すぎて物を製造する場所が無い⇒知財、特に特許権の必要性が低い
・アジアの金融の中心、模倣品の流通経路には成り得ても、アジアの知財中心に成り得る環境ではない
と実感したので、シンガポールは一旦、見送ることにしました。
2017年施行予定の欧州で単一効特許が実現され、オプトアウト(適用除外)の7年が経過する2024年以降は、セントラルアタックで欧州全域をカバーする一つの権利が取り消されるリスクや敗訴リスクが高すぎるので、
正直、欧州特許庁に対する特許出願は激減すると思っています。
そのころ、日本人の欧州弁理士は30~50人になり、飽和状態になっていると予想されます。
一方、ドイツ、スペイン、イギリス、イタリア、フランス等、
事業エリアや製品に応じてピンポイントで、その都度、必要な国を選定して、特許、実案、商標、意匠と、必要な権利を取得する方向性に進むと思います。
特に、過去三年間、増加率20%という勢いで増加してきた、日本からドイツへの国内移行出願は一層に増加すると思います。これに対応出来る日本弁理士はドイツ語の壁もありまだ大変に希少だと思います。一方、日本弁理士ではなく、日本人という枠に広げれば、対応出来る方はかなり増えているように思います。欧州弁理士資格を持った日本人が今後5~10年で激増すると思いますが、そのころには、欧州各国の弁理士資格をもった日本人の方が希少性は高まっていると思います。スペインであればこの人、といった欧州各国の枠を狙うのであれば今のうちです。現在日本で活躍中で5~10年後に欧州各国の第一人者となる人はこうした洞察力をもってコツコツと準備をしている方だと思います。ドイツに来て思いますが、人と違ったことをやるのであれば、そのエリアでやはり第一人者にならなければその価値も激減します。同じ理論で、この第一人者になったからこそ、日本国内の初代所長弁理士の皆様は尊敬に値します。
逆に、これらのエリアのマーケティングや法制度に精通して、
各エリアの代理人と太いパイプのもとに、クライアントの事業に応じたコーディネータをできれば、すごく面白い仕事ができるのではと思っています。
私もこつこつと、欧州圏内でのネットワーク網を拡張中です。
欧州に居ると逆に、日本の景気は上昇傾向、治安もよく、
欧州より勢いがありそうに見えます。
日本弁理士が増えているとはいえ、まだまだ未開拓のブルーオーシャンも存在するようにも見えるので、
言語と人種の壁を越えて海外で働きたいという方は、
その理由と必要性と将来性を一旦深く考えてみるといいかもしれません。
事実と希望的観測とを分別することの重要性
最近色々な人と話す機会がありますが、
私含め、事実と自分の意見・希望とがごちゃ混ぜるなることの危険性を痛感します。
事実に混ざって途中から、自分の意見・希望を話してしまうと
聴き手が自分の意見・希望を事実と誤認してしまって、
あとあと、『話が違う』となるケースです。
・話し手としては、私の見解では~。事実として~。を使い、
・聴き手としては、本人の希望的観測なのか事実なのかを確認することで、
間違った情報に基づく重要な決断を避けることができると思います。
いろんな情報発信を見ても、実はこれらが混同していることが多いので、
収集した情報をもとに行動する際、
それは事実なのか、それとも話し手の希望的観測なのかを見極める
ことは、情報化社会で極めて重要なことだと痛感する日々です。
PCT出願の国際調査機関の見解書ISAに対する非公式コメント“informal comments” 其の弐
PCT出願の国際調査機関の見解書ISAに対する非公式コメントについては、WIPOより詳細に説明されております。以下、下記WIPOニュースレターに基づく情報です。
http://www.wipo.int/export/sites/www/pct/ja/newslett/2015/newslett_2015.pdf
Q:
・国際調査機関の見解書を受け、国際事務局へ非公式コメントを提出したいのですが、非公式コメントに関連するPCT 規則の情報が見あたりません。
・非公式コメントの提出期限及び、PCT 第19 条に基づく説明書のように、非公式コメントに文字数の制限があるのか教えて下さいますか?
・また非公式コメントは国際出願と共に公開されますか?
・今後もし国際予備審査請求書を提出する場合、非公式コメントは国際予備審査機関へ送付されますか?
A: 2002 年9 月に開催された第31 回PCT同盟総会にて、国際調査機関(ISA)による新しい形式の見解書の作成に関するPCT規則が採択されました。
同盟総会は、出願人がISA見解書に応答するための特別な規定を規則に含まない旨を同意しました。ISA見解書に対する公式な応答は、国際予備審査手続きの一部としてPCT第34 条に基づき、国際予備審査機関(IPEA)へ提出される必要があります。
しかしながら、国際予備審査請求書が提出されない場合には、出願人は国際事務局(IB)へ非公式ベースでコメントを提出することにより、ISA見解書に対し反論の機会を得ます。
そのような非公式コメントはその後、指定官庁へ送付され、さらにPATENTSCOPEにて閲覧可能となります。非公式コメントである故に、PCT規則には関連する情報がありませんが、PCT出願人の手引 国際段階の概要のパラグラフ7.030(http://www.wipo.int/pct/guide/en/gdvol1/pdf/gdvol1.pdf)にいくつか情報があり、また関連するPCT同盟総会文書には有用な背景情報が掲載されています。
非公式コメントを提出する特別な期限はありませんが、当該コメントを提出できる最も早い時期はISA 見解書の作成後であり、優先日から28 ヶ月の期間内に提出すれば、当該コメントは国内段階移行時に指定官庁で利用可能となります。
優先日から30 ヶ月を過ぎて受理された非公式コメントは、単に国際事務局IB の一件書類に保存されるだけで、PATENTSCOPE には掲載されず(期限満了後にIB へ提出された他の文書と同様)、指定官庁へも送達されません。
国内段階手続きにおいて、何れかの指定官庁がISA 見解書に対するコメントを考慮するよう希望するのであれば、当該コメントは直接各官庁へ提出する必要があります。
非公式コメントの言語に関しては、何れの言語の非公式コメントもIB は指定官庁へ通知し(複数言語の場合もあり)、何れの指定官庁も、該当する場合には、当該コメントの翻訳を要求することができます。
PCT第19 条に基づく請求の範囲の補正に関する説明書の500 語を上限とする要件(PCT規則46.4)とは異なり、非公式コメントには文字数の制限がありません。
また、PCT第19 条に基づく補正とは異なり、非公式コメントは国際出願と共に公開されませんが、国際公開日後にPATENTSCOPE(“書類”タブから)にて閲覧可能となります。非公式コメントは、ISAに送付されず、国際予備審査請求書が提出された場合はIPEAにも送付されません。
非公式コメントはePCT システム(https://pct.wipo.int/ePCT)の“ドキュメントアップロード”機能を利用して国際事務局IB へアップロードすることができます。
本機能の利用には、基本的なWIPO ユーザアカウントを作成しePCT パブリックサービスを利用することででき、電子証明書でユーザアカウントの認証をする必要はありません。或は、非公式コメントを次のFAX番号へ送付することも可能です:
+41 22 338 82 70
もし国際予備審査請求書を提出し、非公式コメントとしてIB へ送付したコメントをIPEAに考慮してもらいたいのであれば、国際予備審査手続(第II 章)の一部として、PCT 第34条に基づきIPEA へ直接再提出する必要があります。
この場合、混乱を避けるため、
“非公式コメント”という表示は削除し、コメントには第II 章の目的のための答弁書である旨を表題に含むことを確認してください。
第II 章の見解書に対する答弁書の提出のための正式な手続きに関する情報としては、IPEA に対して複数の補正や抗弁をすることができますし、またIPEA に口頭で連絡することも可能です。詳細はPCT 規則66.2 から66.6 及び66.8 をご参照ください。国際予備審査請求書が提出されれば、非公式コメントは指定官庁へは転送されませんが、PATENTSCOPE では閲覧可能です。
該当する場合、PCT 第19 条に基づく説明書と補正書を共に提出することで、及び/または、国際予備審査請求をしPCT 第34 条に基づく補正書を提出することで、ISA 見解書で指摘された事項に応対すれば、より強力な特許を得られるかもしれません。19 条補正の提出は非公式コメントの提出への追加という形でできますが、異なる形式の提出であることを明確に区別するよう注意してください。
上記に述べたように、国際予備審査の目的のための非公式コメントの内容の提出を希望であれば、第II 章の目的のためであると明確にしIPEA へコメントを再提出する必要があります。
欧州特許庁(EPO)によりすでに調査された先の出願に基づく優先権を主張して受理官庁としてのEPO へ提出された国際出願で、EPO がISA として選択された場合においては、国際出願と共に先の出願に関してEPO へ非公式コメントを提出することが可能です。
必要な要件を満たせば、国際調査を担当する審査官は非公式コメントを考慮するでしょう。“PCT Direct”として知られるこの手続きは、上記で議論されるPCT の通常の非公式コメントと混同されませんようご注意ください。(PCT Direct の詳細は、PCT Newsletter 2014 年11 月号の4 ページを参照。)
以上、かなりマニアックな情報ですが、参考になれば幸いです。
PCT出願の国際調査機関の見解書ISAに対する非公式コメント“informal comments”
PCT出願においては、国際調査機関の見解書(WO/ISA)について反論できる機会を出願人に与えるため、
非公式コメント“informal comments”の提出が認められています。
非公式コメントは、PCT出願の言語で国際事務局(IB)に直接提出します。
国際事務局は、指定官庁から請求があると非公式コメントを指定官庁に送付します。
⇒つまり、請求がなければ自動では転送されません。
非公式コメントを移行先の国内段階の審査に加味させたい場合、非公式コメントとその翻訳文の提出が国内移行時に必要です。
ただ、非公式コメントの考慮の可否は審査官の裁量に委ねられています。
以下詳述します。
(1)非公式コメント“informal comments”の取り扱い
非公式コメントは、移行先の各国特許庁の審査官の裁量により考慮可能なようですが、
国際段階で提出された非公式コメントは、PCT国際段階の移行先であるドイツ特許庁、欧州特許庁のいずれにおいても考慮されない傾向にあるようです。
(2)PCT19条補正が行われた場合
国際調査報告(ISR)に対するアクションとして、PCT19条に基づく補正を行うことが可能です。この際、PCT19条補正について、500文字以内の説明書を提出することが可能です(PCT規則46.4)。
しかしながら、国際調査報告(ISR)に対する応答として、PCT19条に基づく補正書やその説明書(PCT規則46.4)が国際事務局(IB)に提出されたとしても、これらはドイツ特許庁の審査官、欧州特許庁による審査には考慮されません。
なお、ドイツ国内移行もしくは欧州段階への移行時に、審査対象とするクレームをドイツ特許庁もしくは欧州特許庁に知らせる必要があります。
出願人が対象クレームを明示しなかった場合、PCT出願のオリジナルのクレームが審査対象となります。
国際段階で行われたPCT19条補正に基づく審査を国内段階において希望する場合、
その明示と補正クレームの提出とが必要となります。
加えて、移行時に、非公式コメントもしくは上記説明書を、ドイツ特許庁もしくは欧州特許庁に提出することが可能です。
(3)その他の重要事項
国際段階において国際調査報告(ISR)の発効後、国際事務局に対してPCT19条補正、PCT規則46.4の説明書、非公式コメントが提出されたとしても、それだけでは、これらの提出書面はドイツ国内段階や欧州段階への移行後、審査官には考慮されません。
よって、審査官に考慮させる可能性を高めるためには、
ドイツ段階への移行時、もしくは、欧州段階への移行時に、
PCT19条補正、PCT規則46.4の説明書、もしくは非公式コメントをドイツ特許庁もしくは欧州特許庁に提出することが有効なようです。
なお、非公式コメントが日本語等で提出されていた場合、欧州特許庁にはその公式言語、ドイツ特許庁にはドイツ語の翻訳文の提出が必要となります。
以上から、以下の2パターンが補正の効果や非公式コメント提出の効果を高める方法となります。
(a)国際調査報告(ISR)発効後、PCT19条補正を国際事務局に対して行った場合
・PCT19条補正+PCT規則46.4の説明書
・非公式コメント+その翻訳文
を移行時に提出
(b)国際調査報告(ISR)発効後、PCT19条補正を国際事務局に対して行わなかった場合
・非公式コメント+その翻訳文
を移行時に提出
ただ、あくまでも非公式コメントは、運がよければ審査官の裁量で考慮される程度なので、
拒絶理由対応時の案として思っておいた方がよさそうです。
さっちザット such that は据え置き
クレームに使われる“A is B such that a is b”のsuch thatには、特有の意味があって、
A is B はあくまで 『a is b のような感じ』であって、
a is bではありません。
例えば、
・AのB部は、aがbとなるような態様で形成される
と日本語で表記されていた 場合、なるような、や、態様の部分がsuch thatとして訳されることが多いです。
よって、クレームからsuch thatを削除してしまうとクレームの意味が変わってしまい、
そのまま特許査定になってしまうと、異議申立や無効訴訟で攻められる要素、修復が難しい要素、となりかねません。
よって、元のクレームにsuch that を含むクレームの補正時には、
such thatは据え置きして他の表現で補正ができないか検討することが重要です。
新天地にて4か月経過 ~所感と課題~
早いもので新しい職場で約4か月が経過しました。
学ぶこともイベントも本当に色々ありすぎて全く処理が追いついていませんが、
あっという間に月日が経ちました。ドイツに初めてきた最初の4か月よりも仕事面では色々ありました。。
思えば、約一年前、今の上司と今のオフィスで簡易ミーティングを行い、結果、今の職場に至っています。日本弁理士資格を持った営業マンやパラリーガルとしてではなく、
『ATTORNEY』として評価し、採用し、特訓してくれたことに改めて感謝です。
ついつい特異な或る分野に特化してしまいましたが
このまま突っ走る前に、下記事項について強化したいと思います。
(1)英語の発音;
アメリカ英語ではなくイギリス英語。手持ちの趣味のDVDドラマは全てアメリカ発なので、これはBBCなどを観て勉強するしかありません。
イギリスを離れて以来、軽視していましたが、仮に流暢に話せたとしても発音が解り難いと、○○弁を高速で喋られたら純東京人には理解が難しいのと同じで、やはり発音も大事です。
(2)ドイツ語;
来独以来、ドイツ生活と初仕事開始3日後、スパルタとして有名な学校で毎晩夜間通学と、
ものすごい勢いでドイツ語の勉強をして、プライベート講師の先生が帰国するわ、新しい先生がゲイだわ、英語を忘れるわ、色々あって、
ものすごい勢いで中断しましたが、
やはりドイツに居るからには日常会話程度のドイツ語は重要だと痛感する日々です。
この二年間のうち、ダントツで成長していない事項です。
“耳”を鍛えることも大事とのことで、朝は早めに起きてドイツ語の子供番組でも観ようと思います。
“労力を傾けたものしか返ってこない”
ことを過去二年間のマーケティング・営業活動で痛感しましたが、
言語学習についても同じで、途中で投資を下げたドイツ語については何もかえってきていません。。 言語はコミュニケーションのツールでもあり、要でもあります。
(3)欧州特許実務
日本特許実務の頭で欧州実務をまだこなしているので、欧州特許庁の審査官の頭の論理構造を解析しなければならないと思う日々です。特に以下が反省・学習事項です。
(a)クレームを土台にして議論;クレーム解釈や発明の理解のために実施形態を読んで、気付いたら本願発明の実施形態と引用発明の実施形態とを比較しているようです。審査官の興味は、“クレーム”の文言とそこから読み取れる効果と引用文献との相違なので、あくまでも“クレーム”を基点に議論しなければなりません。
(b)重要事項に絞ってシンプルな応答案
本願クレームと引例の開示事項とを比較し、差異を抽出します。
抽出した差異に“重み付け”を行い、重みの高い差異に絞って議論します。
あれもこれも全部と差異や想到困難性を主張しても
逆に、『それほど理屈を並び立てないといけないほど、差異が弱いのか』
と勘繰られてしまうので、
重要なポイントのみを一突きする
くらいの気持ちで、応答案では、シンプルな戦術を行うように心掛けます。
外国語学習法
ドイツに二年も住んでドイツ語がさっぱりな私が言うのもなんですが、
学校にも通わず、独学でハイレベルな日本語を身に付けられたデンマーク人の勉強法、参考になります。
そういえば、周りを見渡してもハイレベルな英語を話す方は、語学学校に通ったというよりも、独学で創意工夫しながら楽しく学んでいたら上達したという方が多いです。
(以下引用)
・まずは学習言語の音に慣れる
・街でもできる限り学習言語を使う
・学習言語で考える癖をつける
・パートナーとの会話では恥ずかしがらずにどんどん新しい言葉を使ってみる
・意味の分からない言葉は母国語ではなく学習言語で分かるまで説明してもらう
・街でもできる限り母国語は使わずに学習言語で会話する
欧州特許庁への新規性、進歩性違反に対する応答案についてのおさらい 其の壱。
キーワードは、“シンプル”かつ“明確”に。
(1)新規性
・引用文献と相違する構成要素についてのみ言及。本願発明と共通する構成要素についての言及は不要。表現方法は本願と引用文献との間で相違があるので、本願クレームもしくは補正後の本願クレームの文言を使って対比します。
(2)進歩性
・distinguished feature に絞って言及
・審査官は本願クレームに注視するので、明細書内での解釈等には触れない。逆に、明細書内での解釈を引用する必要があるのであれば、その文言がクレーム内に取り込む必要があるということ。
・本願効果を引用する際は根拠となる段落を記載
(3)クレーム補正
新規性の主張で明確となった引用文献との相違点をプレアンブル(おいて書き部分)以下に、
共通点はプレアンブル(おいて書き部分)に記載。
審査官が補正案を提案した場合でも、それを丸写しするのではなく、プレアンブル前後の構成要素の羅列は整理する。
日本実務では、なるべく補正を行わず、
論理付けの困難性をあれよこれよと主張することで特許査定になった成功体験も多いので、
ついその癖であれよこれよと反論要素を書いてしまいますが、
欧州特許庁に対しては審査官の判断要素となり得ないことを事細かく書いても読まれないので、
余計なことは書きません。
最小労力・最小費用で最大の効果が得られる応答案を目指します。
違うからには理由がある
特許庁からの指摘事項に対応する中間処理業務、特に、新規性、進歩性違反に対する応答は、
『引用文献との間違い探し』です。
(間)違いを探すときに、本願発明と引用文献の相違点が見つけたら、
次に、なぜ違うのかを探しましょう。違うからには~の目的を達成するため等の理由が存在するはずです。
逆に、発明者から渡された図面をもとに明細書を執筆する際、
この図面と、調査した先行文献とに違いを見つけたものの、
その違いによる理由が見つからない場合、別にその部分は先行文献と同じであってもよいわけです。
そして、その部分は代替可能なバリエーションがいくつか存在するはずです。
この代替可能なバリエーションを明細書中で担保することもまた、権利範囲を担保したり、
特に後願を排除する際に有効です。
中間処理をしていると、この代案として記載されたたった一行のバリエーションの示唆によって権利範囲を縮小しなければならないなど、『まきびし』としての効力を発揮していることを実感します。
優れた共通項の見つけ方
最近、頼まれてもいないのに毎晩いろんな企業研究、事務所研究をしています。
特に、ここ最近急激に成長しているところに注目し、そこから共通項を抽出し、成功要因を探っています。
ここで、例えばラフ集合論理に基づいて、
集合データから或るグループ(ここでは成功したグループ)を取り出し、
そのグループの共通項から、当該グループの属性(ここでは『成功』)を導く際には注意が必要です。
例えば、繁盛している寿司屋の共通項を探すとします。
年間収益1億円以上の10店舗を東京で特定したところ、
10店舗のうち9店舗が築地に存在しました。
よって、繁盛する寿司屋の成功要因を
『ロケーション=築地』
としてしまうのは危険です。
それは、繁盛していない寿司屋も築地に数多く存在し、
そらの共通項もまた『ロケーション=築地』だからです。
よって、例えば、繁盛している寿司屋(トップグループ)と、まあまあ繁盛している寿司屋(トップツーのグループ)とを比較し、
トップグループにはあって、トップツーのグループには存在しない共通項を抽出します。
ここで大事なのは、繁盛している寿司屋(トップグループ)とまあまあ繁盛している寿司屋(トップツーのグループ)とを比較することです。
なぜなら、この比較の結果見えてくる共通項こそが、
繁盛している寿司屋(金メダル)とまあまあ繁盛している寿司屋(銀、銅メダル)とを差別化する鍵であり、
『ネタが産地直送2時間以内かつ予約制』等、トップをトップならしめたる理由が見えてきます。